日本人選手は…「もっと失敗を恐れずにプレーしてほしい」。イングランド人メンターが語る“指導者の責任”

2019年10月23日

育成/環境

イングランドFAは、2014年に「コーチメンタープログラム」をスタートした。地域の指導者やチームをしっかりとサポートできる人材「コーチメンター」を育成することが目的である。そのプログラムのインストラクター「サポートメンター」として250名以上の指導者やチームをサポートした実績を持つポール・ニアリー氏に取材する機会を得た。彼は、イングランドFAのコーチインストラクターとしてレベル1・2などで講師も務めている。

現在はイーストアングリア大学のサッカー事業担当長として、サッカーを通した学生の人材育成および大学の付加価値高めることに尽力しているという。イングランドFAが認めた20名ほどしかいないコーチメンターのインタビューを3回に渡って全公開している。最終回となる第四弾では、クラブ哲学、価値観を示し続けることの重要性について語る。

【10月特集】イングランドのサポートメンターに問う

取材・文・写真●木之下潤


大阪トレセン

イングランド指導者から見た日本選手の良さ

——コーチメンターには多様な知識であったり、能力がであったりが必要なことだと思います。相手のことを見て「どういう心理になっている」とか、コミュニケーションを取る上で社会性をしっかり持っていることが指導者としてすごく大きなことかなと、ポールさんと話をしていて感じます。指導者は人と人との関わりを上手に持ちながらいかに自分を向上させるかが大切なことなのではないか、と。

ポール そういう社会性であったり、サッカーの知識であったり、もうあなたのおっしゃる通りです。だから、最初に「お父さんお母さんがどうなの?」と聞いてみたんです。

——とてもおもしろいです。

ポール 私もおもしろいです。私のコーチ哲学は、サッカー選手として育てるだけでなく、人として育てること。その両方がないといけないと思っています。

——その理由は?

ポール それが自分では正しいと思っているからです。いいクラブに長くいた。いい指導者についた。選手としての経験を含め、私は「人としてのもの」をすごく大切に教えられてきました。例えば、小さい頃、変な髪型をしたりしたら怒られていました。それってクラブに対して自分自身をベストの状態でプレゼンできていない状態ですからね。育成でスタンダードを学んでいる時に、余計なものが入ってくるとそれがブレる恐れがあります。クラブの価値、クラブの哲学がしっかりしているからこそ選手自身にはいつもベストの状態を作っておいてほしいと願っています。そうすれば学び方が変わるから。そのベストの部分とは、人としての部分です。

——一つの考え方として、プロになるのは一握りで、それ以外ほとんどの選手が一般社会で働くことになります。

ポール その通りです。教育もとても大事なものです。だから、今回は将来的にイギリスの大学に来るような日本人を増やすために来日しました。

——ポールさんから見て、日本人選手の良さはどういうところにありますか?

ポール テクニックはすごくあります。ボールを持っているテクニックはすごくいい。でも、心の面でもっと失敗を恐れずにプレーしてほしいと感じています。失敗を気にしてはいけません。それに、コーチを喜ばせようとしている子が多いように思います。そこが失敗の恐怖と一つながりとして現れているのではないかな、と。社会性においては学びたい、上手になりたいと思っている子がとても多いです。お互いに対して、コーチに対してリスペクトを持っている選手も多いです。フィジカル面では体力があり、強い子も多い。だから、試合のプレー強度と同じくらいのトレーニングをしていたらもっと良くなるでしょう。

——大学に連れて行きたいと思った時に、「もうちょっと伸ばしてほしい」と思うところはありますか?

ポール プレー強度を高めること。プレーするのに勇気を持って恐れないこと。この二つが重要なことかなと思います。

——ここ数年、イングランドはユースカテゴリーで結果を出していますが、今後もっとレベルアップをしていくためには何をすべきだと思いますか?

ポール 自分たちの信念を貫き通すこと。変えたりいじったりするよりも信じてやり続けることだと思います。

——なぜそう思うのですか?

ポール カギとなるのは、常に「こうだ」というメッセージを発信し続けることです。メッセージが重要だし、発信することが必要です。そして、正確で明確なプランも必要です。そもそもいろんなことをチョコチョコ変えていたら「進行の変化」が見えなくなってしまいます。選手たちにとっても、それがなくなったら道が見えなくなってしまいます。

——今「なぜそう思うのか?」と質問したのは、先々月Jリーグで監督を務めている指導者に取材した時に同じ話題が出たからです。ある程度の長いスパン、一貫したメッセージを発信し続けないとそれが良かったかどうかがわからない、と。きちんとしたトライ&エラーが測定できないからだと言っていました。

ポール やはりクラブが貫いていることから離れると落ちていくことは多々あります。たとえ、名門であったとしても。だから、価値観や哲学は変えてはいけないものだと思います。うまくやっていることがあるなら、さらに良くなっていくようにやればいいのではないでしょうか。

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