停滞するJクラブと、老練な街クラブ。U-12年代で浮き彫りになる“違い”

2020年01月22日

育成/環境

「全日本U-12サッカー選手権大会」は、バディーSC(神奈川県第二代表)が柏レイソルU-12(千葉県代表)に3対1で勝利し、幕を閉じた。試合内容に目を向けると、少しずつ指導格差も小さくなりつつあり、日本のジュニアサッカーは次のステップへと足を踏み入れている。

しかしながら、今大会もまた取材するメディアが減った。決勝以外の貴重な情報を独自に届ける媒体は、もうジュニサカWEBだけとなった。そこで、今月の特集はこの大会を取材して気づいたことを備忘録として残しておきたい。毎週コラム形式で多様なテーマを綴れたらと思う。今回の特集第三弾は「Jクラブの現状」「街クラブのハメる守備」について触れたい。

【1月特集】「全日本U-12サッカー選手権」備忘録

取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之


ベガルタ仙台

Jクラブのジュニアが発展途上であることを知ってほしい

 全日本U-12サッカー選手権大会を戦ったJクラブで印象に残ったのは、横浜F・マリノスプライマリーとベガルタ仙台ジュニアくらいだった。

 それは「クラブのサッカーがバージョンアップしている」という意味である。正直、他のクラブは停滞している感が否めない。「監督が代わった」などの要因はいくつかあるにせよ、地域のタレントをセレクトしている責任は常につきまとう。クラブとして、一コーチとして、そのあたりのことをどう考えて取り組んでいるのかは、一度本音を聞いてみたい。

 先日Twitter上で、若いコーチがこんな投稿を発信していた。

「ジュニアの街クラブの指導者とかはどこを目標あるいはモチベーションにして指導してんだろ。こっちだとバルサ・エスパニョールは指導者にとって1つのモチベーションになってるもんな。」

 これを読んだとき、「日本では、指導などすべてにおいてプロクラブが絶対的ではないから欧州とは違うよ」と、心の中でつぶやいていた。あくまでジュニアでの話だが、コーチのレベルはJクラブより「安定して全国大会に出場している街クラブのほうが上だ」と思うことが多々ある。サッカーに関する知識量では、確かにJクラブのコーチのほうが豊富かもしれない。しかし、使える引き出しが多く、選手の心身の状態や試合状況によって柔軟な対応ができるのは、間違いなくそういう街クラブのコーチだ。

 特に一年を通して全国大会に出続け、決勝トーナメントにも進むような街クラブは、コーチの引き出しと柔軟な対応力を選手も身につけている。コーチと選手とは二人三脚で歩んでいるので当たり前だが、共有するサッカーのイメージの解像度と、状況に応じてそれをスライドするスピードがものすごく早い。

 Jクラブに対して思うのは、「監督交代による変化とクラブの指導メソッド見直しによる変化はまったく別物」だということ。想像だが、Jクラブの変化は前者で受動的であることが多い。数年ごとでも、彼らが後者に取組んでいるかは疑問だらけである。そう言えるのは、私もある程度Jジュニアを定点観測できているからだ。街クラブとは違い、ある一定数のJクラブはどの全国大会にも出場している。

・北海道コンサドーレ札幌U-12
・ベガルタ仙台ジュニア
・浦和レッズジュニア
・柏レイソルU-12
・東京ヴェルディジュニア
・横浜F・マリノスプライマリー
・名古屋グランパスU-12
・アビスパ福岡U-12
・サガン鳥栖U-12 … etc.

 今大会の出場チームを例に挙げても、過去3年間というスパンで見通すと定期的に試合を見ている。自分なりには、「監督が代わった」からと言って変えてはいけない普遍的な部分と変わらないといけない部分を分析しているつもりだ。むしろ感覚的には、様々なJクラブが迷走しているような気がする。おそらくスタッフは気づかない。しかし、例えば5年生から6年生に上がるタイミングの選手で、クラブに大きなスタッフの入れ替えがあると、彼らは戸惑いを感じているに違いない。毎年取材していると、それがプレーの中で伝わる場面に遭遇する。

 クラブ哲学から導き出される再現性あるプレーは普遍的なものだ。それをベースにアカデミーとしてさらに上乗せするものがなければ、所属選手に対してどんな将来的保証をもたらしているのか。そこへの責任は大きい。この時期、街クラブのコーチが「本当はJクラブに行かせたくない」と本音をこぼすのは、そういう部分にある。

 私は「Jクラブがいい」、「街クラブがいい」の議論をしたいわけではない。日本のジュニアの現状を伝えたいだけだ。まだ発展途上にある日本サッカーにおいて、Jクラブも試行錯誤をしている真っ最中なのである。だからこそ地域クラブのコーチ、そして保護者も冷静に選手の将来を考えてほしい。

 まだ日本のジュニアは、Jクラブが絶対ではないのだから。

ディアブロッサ高田

前線からの「ハメる」守備を仕掛けられる全国大会の常連チーム

 Jクラブはどこも決まりきったように、ディフェンスラインから丁寧にビルドアップを行う。

 取材をしていて「頑なだな」と感じる。全国大会だと、ほとんどの街クラブはその間に守備組織を整える。そして、Jクラブもそれを待つかのようにゆっくりとボールを前に進める。特集の第一弾でも書いたが、こういうこともあってセットされた攻撃、セットされた守備の状況が生まれている。もちろん、これが悪いときばかりではない。自分たちが落ち着きたいときもあるから。

 しかし一試合を通じて、こればかりはどうなのかと思う。相手の状態を認知できていれば、守備に穴は空いている。パス交換をテンポアップして、その穴を突くことができればチャンスは大きい。にもかかわらず、Jクラブの選手は「サッカーはこういうもの」といった感じのプレーに終始する。

 だが、センアーノ神戸(以下、神戸)、ディアブロッサ高田(以下、高田)といった全国大会の常連チームはそこを突く。

 俗にいう「ハメる」という組織的な守備を、彼らは見事に操る。予選グループ突破がかかった試合、高田は横浜F・マリノスプライマリー(以下、横浜)を相手に試合開始直後からハメに行った。その突然のテンポチェンジに横浜は適応に時間がかかり、前半に2失点を喫してゲームプランを崩された。最終的には3点を返したが、結果は3対4で序盤の出遅れを取り戻せなかった。

 私は、試合前から高田がこういう手段を講じることを予想していた。それは5月のチビリンピックでも川崎フロンターレ(以下、川崎)を相手に同じ戦略をとり、勝った経験があったからだ。この試合後、川上弘仁監督はこう答えていた。

「僕らが勝つには、この方法しかありませんでした。どう考えても川崎の子らのほうがボールを動かす能力は上やし、受け身になったらどんどん横に展開されてこっちが疲れるだけです。後手に回ると勝ち目がないので、高い位置からプレスをかけるしかない。でも、彼らもここまでのハイプレッシャーはそこまで経験していないんじゃないですか。まだ5月ですから」
 
 高田は前線がとりあえずボールに追い回してプレッシャーをかけ、後方の選手に対応を任せている。ハメる戦術としては前線がはっきりとパスコースを限定しないため、後方の選手は判断力を必要とする。この川崎戦は前線と後方が見事にかみ合った会心の守備だった。試合後、川崎の高田栄二監督も「完敗です」と、高田のハイプレスに対応できなかったことを認めていた。こんな経緯があったので、私は、高田が予選突破をかけた横浜戦で「仕掛けるだろうな」と思っていた。

 そして、この「ハメる」守備に関して、高田の上をいっていたのが神戸である。この2チームはチビリンピックの決勝カードでもあるのだが、この大会の神戸はハメる守備を習得している過程の段階だった。前線の選手がパスコースの限定を外からの指示がないとわからず、後方の選手は限定されても状況を認知できない状態だった。

 しかし、全日本で見せた神戸の「ハメ」は完成されていた。

 ボールの回収率でいえば、出場チームの中で三本の指に入る安定感だった。事実、神戸はベスト4で優勝したバディーSCに負けるまで、失点はたったの1点。今大会、彼らが慌てるシーンを見たことがなかった。1トップとサイドが中央へとボールを追い込み、縦方向へのパスを入れさせるようにコースを限定する。後方の選手はその縦方向へのパスに対して程よくマークをガチガチにしながらインターセプトを狙うか、前を向かせないかを的確に判断し、それを見た周囲の選手もマークした味方の対応でプレーを変える。まるで各世代の代表が見せる相手陣内でのボール回収シーンを見るような守備だった。

 とはいえ、今回の神戸は攻撃のところが物足りなかった。タイミングよくクサビのパスを入れられると、複数の選手がダイレクトプレーで相手を崩すイメージの共有はできていて、何度かそういうシーンは出ていたが、そうできなかったときの攻撃がまだいろいろと表現できるレベルになかった。ただ、それを埋めるために彼らはコーナーキックにサインプレーを用意していた。ここらへんの引き出しを作るあたりは「さすが」と感嘆させられる。

 いずれにしろ2チームとも、実践を通してコーチが示すサッカーイメージを少しずつ覚えていき、全日本の頃には阿吽の呼吸で体現できるようになっていた。チームがボールを保持できる場合、五分五分で拮抗する場合、ボールを持たれる場合、激戦区の関西エリアでJクラブ、強豪街クラブと様々なタイプのチームと対戦する中で、彼らは自らアクションを起こして勝ち切ることにトライし続けている。

 ここが、Jクラブとの大きな違いである。

>>1月特集の第四弾は「1月28日(水)」に配信予定


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