「今起きている現象は偶然か。それを再現する方法を知っているか?」指導者に求められる言語化の力
2023年03月13日
フィジカル/メディカル指導者には選手の現在地を示し目指す方向を明確にする力が求められる。今のプレーは奇跡的なものだったのか、それを繰り返す方法を知っているのかを分析する力必要になってくる。そして、そのような指導、分析を行うためには当然のことながらプレーや動きを言語化する力を指導者や選手たち自身が身につける必要がある。そこで今回は『身体動作解体新書』より、選手や指導者に求められる言語化の力について紹介する。
文●里大輔

(写真●Getty Images)
速さや巧さを再現できて繰り返す方法を知っているか
現在、指導を行う選手の中で成熟された選手が多くなってきているように思います。現役生活が一回りしたあと、最後の突き詰めをしたい、そういうイメージです。それはなぜかといえば、若い頃は成長とともにどんどんアビリティが進化してパフォーマンスが上がっていましたが、それが止まると、二進も三進もいかなくなる。アビリティの限界を埋めるために、テクニックやスキルに意識が移行するわけです。スキルは競技ごとにアナリストがいて、情報も増えていますが、テクニックのレイヤー、正しい身体の使い方はなかなか溝が埋まらず、最後の最後で彼らはそこに帰ってきているように思います。
選手たちは常に進化に向かって歩んでいますが、一方では毎年、自然とパフォーマンスが衰えていく現実からも逃がれられません。だから新しい扉、今まで開けていなかった扉を開けたい。若い選手としてスタートしても、日々終わりに向かっていくことは避けられないので、その中でも生き抜く術や進化のきっかけを、新しい言語に求めている。それは強く感じています。
超一流は、成長の途中でそれに気がつくので、自らアビリティを拡大しながらテクニックやスキルを埋めた状態でトップアスリートになります。だから、とんでもないことができる。それが最後の最後、アビリティの衰えに抗う形でテクニックに目覚めるのは、忸怩たる思いがあり、選手本人も「もっと早くにやっておけばよかった」と悔やむ部分はあります。だからこそ、最近はそういう成熟した選手が、若い世代の選手も早い段階で言語化したり、もっと自分の可能性に期待してほしい、と一緒に若手とトレーニングする姿を見てうれしく思います。
「アビリティとかテクニックとか…いいじゃん、速いんだから」「巧いんだからいいじゃん」「できたんだから」と考える人がいると思います。アスリートは結果の世界なので、そのとおりではありますが、重要なことはその速さ、巧さを再現できるのかどうか。私にとっては、そのプライオリティはものすごく高い。奇跡的に起きた1回なのか、あるいはそれを繰り返す方法を知っているのか。選手にとってどちらがハッピーなのかといえば、圧倒的に後者です。
言語で学ぶ、言語で知るというのは、まさに再現性を高めることです。再現性が高まれば、当然パフォーマンスは上がり、言語化されれば基準が明確になります。「大阪に行け」ではなく、「大阪のどこに何月何日にこの方法で行け」と具体的に言われると目標を立てやすいはず。遠く離れた土地の人がいきなり「大阪に行け」と言われたら、一瞬、唖然とすると思いますが、その空白の時間をなくしたい。まずは選手が地図上のどこにいるのかを示し、目指す方向を明確にし、いつ、どうやって、どのタイミングで行くのかを準備し、選手と双方向のコミュニケーションを取りながら、選手の叶えたい姿を設計していく。
そういう意味では、コーチはどれだけ準備を緻密にするかどうかで、選手が1分で進化するのか、10分で進化するのか、1時間かかるのか、1日なのか、1年かかるのか。彼らの運命を左右している責任があります。だからこそ会った瞬間から明確なことを伝え、「100%こうだ」と言い切れるような準備と学びを続けることが私のやるべきことだと感じています。答えを求められれば「こうかもしれないね」ではなく「絶対にこうだから自信をもってやってみよう」と。
今起きた現象の原因はこれで、こうすることによって変わる、ということを的確にシンプルに伝える。それは相手が子どもでも大人でも、動くものに対してはそういう責任感で接していきたいと思っています。
全文は『身体動作解体新書』からご覧ください。
【商品名】身体動作解体新書
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2023/03/07
【書籍紹介】
暗黙知をすべて言語化するとありとあらゆる動きを設計できる!!
どうすれば速く走れるのか、どうすれば高く跳べるのか、どうすれば強く蹴れるのか――。「本質」を知ると、「現象」が見えるようになり、「評価」できるようになり、「できる」ようになる。ラグビーをはじめさまざまな競技のチーム・選手のパフォーマンスを飛躍的に向上させたパフォーマンスアーキテクト・里大輔による本質的「身体動作のガイドライン」。
【関連記事】
・“バタバタしている・キレがない”動きの原因は?“全速力”と“全力”違いは?足が速くなるためのタイミングの見方
・感覚に依存せずに再現性を高める。パフォーマンスを分析するための『9つの指標』とは
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