社会が狂わす“現代の子ども”をサッカーで変えるためにできること
2014年11月21日
コラム実はサッカー初歩の指導が子どもたちを変える
この数ヶ月、そんな思いに掻き立てられながらジュニアサッカーの現場を歩いてきたが、前出の松本さんのように20年以上の指導キャリアを誇る指導者たちの間で、シンプルではあるが大事だと考えられている指導のポイントが見事に一致しているので紹介したい。それは次のようなものだ。
『ボールを奪われた瞬間にすぐに奪い返させる』
なんだ、そんなことか、と思われるかもしれないが、日本のU12世代がこの点を徹底できているかといえば答えはノーだ。いやU12世代に限らず、その上の世代も、プロも、なのだが。
「俺のボールを奪うんじゃねえ!」
欧州や南米の子どもたちは血気盛んにボールにいく。それはサッカーをする者としての本能のようなもの。サッカーをプレーする以上はそれが当たり前。
ところが日本では、ボールを奪われたときに、あー、と天を仰いでプレーを止めてしまう子どもが数多くいる。うまいと言われる子どもほどボールを奪われたあとにろくすっぽ守備をしないから、指導者は頭を抱えるはめになる。
ボールを奪われた子どもがすぐさま激しくボールを奪い返そうとする。その感覚が当たり前になれば、ピッチ上のプレーの激しさや強度は増すだろう。ボールを奪われた子どもがすぐにボールホルダーを潰せれば、相手の攻撃の芽を摘み取ることができるし、自ずと球際の攻防に迫力が出てくる。
一方で、相手のボールホルダーはすぐにプレッシャーがかかるのだから、ボールを奪ってから悠長にプレーしているスペースや時間がなくなる。自ずと状況判断のスピードやそれに伴う技術を身につけなければならなくなる。
強度の高いプレー環境に子どもをどっぷりと浸からせて、切磋琢磨させる、サバイバルさせる。ここでより重要になるのは指導者の目だ。
「一つひとつのプレーを指導者が見ながら『そのプレーを続けていたら5年後はどうなるかなあ?』などと声をかけてあげればいい。本当に負けたくないという100%の気持ちでいまを戦えているかどうか。そこはしっかり指導者が見てあげないと」(松本さん)
初めは子どもが、やらされている、という感覚でもいい。だが強度の高い環境でのプレーが当たり前になったとき、子どもに知らず知らずのうちに負けず嫌いさやたくましさが少しずつでも身についていれば、そして、眠っているだろうパッションを徐々にでも引き出すことができれば――。
もちろん、ボールを奪われたら奪い返す、これもあらゆる方法論の一つでしかないのだろうが、長年子どもを見続けてきた指導者たちが“現代の子ども”をサッカーで変えるためにまずやるべきこととして口を揃えているのは事実。暗中模索のいまを突破する糸口として、いますぐできる方法論として、おススメしたい。
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