14歳までのバルサ育成哲学。さまざまなポジション経験が将来のサッカー人生につながる
2015年09月01日
コラム大人たちは年代別の身体的特徴をしっかりと把握しなけらばならない
最後に、重要なことに触れたいと思います。私が指導したゴールキーパーのなかに、早熟な選手たちがいました。彼らは14歳にして体が完全にできあがっており、セービングは素晴らしく、同年代の選手たちに比べて身体的に恵まれている非常に目立った存在でした。
しかし残念なことに、彼らは体の成長が止まったときに、他のゴールキーパーたちに追い抜かれてしまい、誰1人としてプロ選手になることができませんでした。もし彼らをゴールキーパーではなくフィールドの選手としてプレーをさせていたら、彼らはプロ選手になれたかもしれません。ゴールキーパーは、やはり身長が高い選手が有利です。
同じ年齢の選手で、長身ではありましたが痩せていた選手たちもいました。彼らはゴールキーパーの資質を備えていたのですが、身体能力が11歳の子どもたちと同じ程度であるということで、ゴールキーパーとしてプレーすることはありませんでした。もし彼らがゴールキーパーとしてプレーを続けていて、私たちが彼らの体が成長するのを待つことができていれば、彼らはプロ選手として活躍しただろうと確信しています。
育成年代の指導者たちは、年代別の身体的特徴について把握している必要があります。選手たちは時系列的に足並みを揃えて成長するわけではありません。成長の速度は、指導者を悩ませる要素の1つです。
例えば、13歳の選手でも早熟な選手は、16歳の選手であるかのような強さ、スピード、持久力を兼ね備えています。こういった選手は、個人プレーに偏ったプレーを行い、どんなところからでもシュートを打ち、13歳のゴールキーパーを相手に、無数のゴールを決めることでしょう。しかしながら、時間の経過ともに、同じ年代の選手たちが成長して同様のパワーを身につけ始めると、早熟の選手たちの活躍は終わりを告げます。
プレーを学ぶべき時期に学ばなかった選手たちは、他の選手たちに追い抜かれてしまいます。その結果彼らが18歳になった時には、サッカーを辞めてしまったり、テルセーラ・ディビジョン(4部)以下へと追いやられたりしてしまいます。
また遅咲きの選手もいます。13歳でありながらフィジカルの能力は11歳程度の力しかないような選手です。しかし、創造性をもちあわせており、技術を磨いてサッカー選手になるという目標を持っています。試合においては、勝利のために必要なパワーを備えていないために、出場機会を得られないことがほとんどです。
しかし、成長してフィジカルの能力が整ってきた時に、こうした選手たちが素晴らしい能力を発揮することがあります。しかし、そうなる前に、失望し、落胆し、屈辱を感じサッカーを辞めてしまう選手たちがいることも事実です。
指導者や保護者は、こういった側面についてもしっかりと理解し、選手たちを見守る必要があるでしょう。
<関連リンク>
・バルセロナが実践するジュニア年代の戦術指導方法とは?
プロフィール
著者:
ラウレアーノ・ルイス
1972 年にバルセロナのユース監督、1974 年にバルセロナのカンテラ(下部組織)を統括するコーディネーターに就任し、独創性あふれる練習法によってクライフに先んじてバルセロナのコンセプトを作り上げた“バルサメソッドの創始者”。これまで、約3 万人の選手を指導し、そのうち約1000 人のプロサッカー選手、うち約50 人の代表選手を輩出してきた。バルセロナの代名詞とも言える“ロンド”の発明者としても知られる。
訳者:
高司 裕也
(たかじ ゆうや)
1982年大分県生まれ。2004年に東京学芸大学教育学部卒業。自身も大学卒業時代までサッカーに打ち込む。2008年にスペイン、バルセロナに渡り、カタルーニャ州サッカー指導者ライセンスレベル2を取得。その後、2011年6月に株式会社BalonQ Sport & Formationを設立し、日本とスペインの架け橋として、シャビ・キャンプ、国内サッカーキャンプ、指導者クリニックの事業を手掛ける。現在は、四国リーグFC今治のオプティマイゼーション事業本部長としてチームの強化に携わる。
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