かつて“怪物”と呼ばれた少年。耳を傾けたい先人の言葉
2016年10月12日
読んで学ぶ/観て学ぶプロで活躍するために欠けていたこと
だが一方で、歩んできたサッカー人生に満足している自分もいる。
「それなりに歩んできた人生を楽しめているもの本心なんです。それに僕が栃木SCで出会ったメンバーは今後一生付き合っていくと思います。他の道を選んでいれば、そこでかけがえのないメンバーと出会っていたと思うけど、僕にとってそれは栃木SCのメンバーでした。
何でも話せる気持ちのいい人たちだし、そういう人たちと出会えたのは自分の人生にとって何より大きなことです。Jリーガーになって、海外へ行って活躍する。そういう夢がどんどん広がるのもいいけど、サッカーを続けるなかで、自分の人生にとって大切な人を見つけることも大事。それは将来奥さんになる人もそうだし、仲間ですよね」
営業の仕事を続けて今年で10年。最近、地元の仲間たちとボールを蹴ることを再開したという。毛利は、昔も、今も、サッカーといい付き合いをしながら生きている。
それでも――。かつて毛利少年の夢はプロサッカー選手になることだった。最後にこんな質問をぶつけてみた。
「プロになるために自分に欠けていたものはあったと思いますか?」
毛利は、うーん、そうですねえ……、そんなふうにつぶやき、十数秒間も深く考え込んだあと、やっぱり……という様子でこう答えてくれた。
「……努力ですね。正直、才能はあったと思いますが、努力が足りなかった。僕は子どもの頃から努力をしなくてもずっと1番でいられたんです。負けず嫌いで、そのときどきに力を出せばライバルに全部勝ってしまった。でも、もっと厳しい指導者に出会って鼻をへし折られるか、自分よりももっとうまい奴と出会っていたら変わっていたかもしれない」

プロフィール
毛利 真司(もうり・しんじ)
1979年、栃木県出身。少年時代は下都賀ジュリアンズのエースとして全国に名を轟かせた。能力は一線級だったがその後は全国に陽の目を見ることなく現役を終えた。自身のキャリアを振り返り、「チャンスがあればチャレンジして欲しい」と子どもたちに呼びかける。
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