アンリと同じく”神童”ではなかったハリー・ケイン。世界屈指のストライカーが持つ「努力する才能」
2018年06月27日
サッカーエンタメ最前線努力できる才能は常に何かを生み出していく
子ども時分は神童ではなく、体格にも恵まれていなかったが、やがて頭角を表し長じて大成するタイプもいる。スーパースターにも意外とこのタイプが多い。ペレ、ヨハン・クライフ、ジーコなど、少年時代はひょろひょろで貧弱な体格だった後のスターはけっこういる。ミッシェル・プラティニは肺活量のテストに不合格でプロテストに落ちた。
かつてはボランチもやったというケインは現在のケインではなかったに違いない。体格にもスピードにも恵まれなかった。ただ、おそらくその時期に現在の基礎を築いたのだ。それは現在の繊細なボールタッチに表れている。
ケインは異常なぐらいボールの収まりがいいFWだが、決して体格任せではなく、敵と自分とボールの関係を的確に保つ。ボールの隠し方が上手いのだ。至近距離でマークしているDFにとって予想外のタイミングでパスを捌くのも得意。ワンタッチパスの感覚が並のFWとは違っていて、ダイレクトの当て方が柔らかく、ダイレクトで蹴っているのに一瞬足に吸い付いているように見える。
少年時代に体が小さかった選手は技術を磨く。そして周囲の状況に敏感だ。そうでないと生き残れないから。多くの情報をインプットする。続けるうちに演算能力が上がり、いつしか反射的に最善の選択をすることも可能になっていく。自分で自分のプレーに驚くようになる。やがてフィジカルが追いついてくると、生き残り戦略として培われた演算能力がモノをいう。
ケインは長身FWだが、プレーの感覚が大きな選手のそれとは違う。簡単にいえば器用なのだ。ロングボールの軌道を読み、DFのミスジャッジを見切る。DFがボールに被ってもケインは釣られない。
常にゴールを狙っているが、必要な瞬間にはちゃんとパスしている。スピード抜群とはいえないもののそれなりに速い。サイドに流れてのドリブルもできる。ポジショニングが的確でボールタッチが秀逸なのでコンビネーションにも入っていける。空中戦も身長のわりには強くなかったが、それも大きく進歩した。
イングランド代表のデビュー戦、わずか79秒で初ゴールを記録し、今ではキャプテンを務めている。メンタルが安定していてプレーの波も少ない。守備も全くさぼらない。欠点のない何でもできるFWなのだが、ケインの恐さはまだ伸びていきそうなところにある。ほぼ完璧なのに完成している気がしない。努力できる才能は常に何かを生み出していくからだ。
<関連リンク>
・【特設ページ】2018 FIFAワールドカップ ロシア
<プロフィール>
ハリー・ケイン(イングランド代表/トッテナム・ホットスパーFC)
1993年7月28日生まれ、イングランドのウォルサム・フォレスト・ロンドン特別区出身。2004年からトッテナムの下部 組織で育ち、2014年からトッテナムのトップチームに定着。プレミアリーグ得点王のタイトルを2度獲得するなど、チームの絶対的ストライカーに成長した。
【商品名】PERFECT SKILL パーフェクトスキル 世界トッププレーヤーの究極スキルを解説する
【著者】西部謙司
【発行】株式会社カンゼン
四六判/256ページ
2018年6月5日発売
【新説プレーヤーズファイル】
欧州サッカーを進化させる超一流たちの技術×戦術眼 ワールドクラスの選手ほどプレーを整理し、ごくシンプルなサッカーを完璧に体現する。メッシ、ネイマール、イニエスタ、レヴァンドフスキ、コウチーニョ、モドリッチ、ディバラなど一流のプレーヤーたちはなぜ欧州で輝けるのか。独特なサッカー観で戦術を紐解くサッカージャーナリスト・西部謙司が軽妙に解き明かす!
>>ジュニサカ公式facebookはこちら
>>ジュニサカ公式Twitterはこちら
>>ジュニサカ公式Instagramはこちら
>>ジュニサカ公式Youtubeチャンネルはこちら
>>ジュニサカオンラインショップはこちら
カテゴリ別新着記事
ニュース
- 【AFC U17女子アジアカップ インドネシア2024】U-17日本女子代表メンバー発表!2024.04.15
- 「JFAナショナルトレセンU-12関西」が開催!2024.04.11
- 「東北トレセンU-13」が開催!2024.04.10
- 【AFC U23アジアカップ カタール2024】U-23日本代表メンバー発表!2024.04.08
フットボール最新ニュース
- 近江高校の躍進を支えた7つの班。「こんなに細かく仕事がある」部員も驚くその内容2024.04.22
- 「三笘薫ガンバレ」状態。なぜサッカー日本代表は個を活かせないのか?2024.04.22
- 【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったか。遠藤を輝かせる得意の形2024.04.22
- リバプールがプレミア制覇に一歩リード?「タイトル争いは間違いなく波乱万丈」2024.04.22
- 前回王者マンC、絶対的司令塔の今季CL初出場・初ゴールで勝利。レアルも先勝2024.04.22
大会情報
- 【卒業記念サッカー大会 第17回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2024.03.10
- 【卒業記念サッカー大会第17回MUFGカップ 大阪大会】フォトギャラリー2024.03.10
- 【卒業記念サッカー大会 第17回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2024.03.09
- 【卒業記念サッカー大会第17回MUFGカップ 愛知大会】フォトギャラリー2024.03.09
お知らせ
ADVERTORIAL
ジュニアサッカー大会『2024'DREAM CUPサマー大会in河口湖』参加チーム募集中!! |
人気記事ランキング
- フォームの意識だけではキックは改善しない。キックの名手たちの共通点とは【フィジカルのプレーモデル】
- 「もも上げクランチ」でキック力を鍛える!/【サッカー専用】小学生のための体幹トレ
- 「2023ナショナルトレセンU-13(後期)」参加メンバー発表!【東日本】
- 自分よりも大きくて速い選手も1対1で抑える。内田篤人から学びたい守備時の姿勢【フィジカルのプレーモデル】
- 「論理と感覚を合わせたい」松井大輔はどんな指導者を目指すのか? 稀有なキャリアを歩んだドリブラー「人と違うものを提供」
- 「2023ナショナルトレセンU-13 関東」参加メンバー発表!
- 三笘薫のドリブル・カットインの秘訣に迫る。1対1で相手を抜き去るための“沈む動き”とは【フィジカルのプレーモデル】
- 4ゴールのゲームは守備の練習にはならない!? 課題となるタスクから逆算し正しく制約を課す【スモールサイドゲーム】
- “神童”と呼ばれたFC東京・品田愛斗「小学生のうちにやらないといけないことは人それぞれ」/ユースプレーヤー成長記
- FCバルセロナキャンプのコーチがチェックするMVP選考基準とは?