サッカーの解釈を深く掘り下げる。認知とプレーモデルの関係【6・7月特集】

2018年07月02日

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6・7月は「認知」をテーマに特集を組んでいるが、アカデミックなテーマを取り上げているサッカー媒体は少ない。そんな中、ヨーロッパサッカー情報を発信し続けている「月刊footballista」は積極的に最新のサッカー戦術などの特集を組んでいる。前回の(なぜ今「認知」なのか。サッカーの戦術的な理解を広く深めることの意義)に引き続き、編集長の浅野賀一氏にその理由と、また今回の特集テーマである「認知」についてどう考えているのかをうかがった。

【前編】なぜ今「認知」なのか。サッカーの戦術的な理解を広く深めることの意義

■第1回
状況判断の向上に「認知力」は必要不可欠である。その真意を説く

■第2回
「問いかける」だけではない。プレーの”選択肢”を広げるために指導者ができること

取材・文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部、佐藤博之、GettyImages


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【footballista編集長の浅野賀一氏】

認知を言葉として扱ったら戦術的なアプローチにつながっていく

――数ヶ月前に大学教授で、女子サッカーを指導されている方がfootballistaさんの記事がおもしろいと絶賛されていました。 具体的なサッカーの体系化と言語化をJFA がやらないという現状がある中、海外のそういった情報を得られる発信している媒体は多くはありません。月刊footballistaという媒体が「認知には機能面と戦術面という二面性があり、そこにはプレーモデルと戦術が関連しているというつながりを示すことで日本サッカーに大きな情報をもたらしていると思っています。

 日本のような遅れた環境だからこそサッカー媒体ができることって私は絶対にあると思っています。戦術的なものは一昔前だとサッカーの体系化を前提とせずにシステムだけで語られている部分が多かったと思うんです。「こういう場面だとああだこうだ」というように。でも、海外の体系化を活用した上で局面の説明ができれば、もっと現場の指導者たちが自分たちなりの解釈をしやすいはずです。そして、より具体性がある中で選手にサッカーを教えていくので戦術的サッカー観みたいなものが養われる。同時にそれが養われることで「どう判断するか」、「そのために何を見るか」という認知の部分にアプローチできると思うんです。

浅野編集長「そうですね。ポジショナルプレーや5レーン理論って独立して存在しているわけではなく、サッカーの新しい解釈の仕方です。だから、そもそもサッカーというスポーツがどういう構造で成り立っているのかということが分かっていくことで状況の認知が高まっていく。例えば、ハーフスペースという用語があります。それはピッチを縦に5分割した時の2番目と4番目のスペースを指します。でも、それがなければ「サイドバッグとセンターバックの間にあるスペースというか、ちょうどその中間にあるスペースを狙え」とか抽象的な説明をするしかない。そういうことではなく、はっきりハーフスペースと用語化してしまえば、そこにあるものとしてみんなが認知できると思うんです。

 結局、認知ってサッカーの解釈とつながっていくからすごくよく扱われると思うんです。だから、月刊footballista54号の特集『欧州の新スタンダードを学べる 戦術用語講座』でも『認知』を意識して取り上げました。言葉として名付けることで現象が共有化されるし、共有化されるということは認知されるということです。戦術的なアプローチが重要なのはそういう役割を果たせるからだと考えています」

――私もツイッターで自分なりに言語化してたまに情報発信をしていますが、リツイートを見ていると「私もこう思っていました。だから、こうこうこうだと思います」という自分の意見を上乗せするツイートをされている方が結構いらっしゃいます。みんな何となく思ってはいるんだけれども、それを具体的に言葉として表現してくれる人を求めている面はあると思います。それがライターなのか、 サッカー界の従事者なのかはわかりませんが、メディア側がそういうことを具体的に発信していく中で議論を高めていくべきなのかな、と。だから、footballistaさんで記事をかかれている結城康平さんなどのような方はフォロワーが増えてるのだと思います。実際にfootballistaさんがツイートしている中で、そういうことを感じることはありますか?

浅野編集長「うちの読者層はコアな方が多いので、批判というよりも『勉強になりました』という方が多いですね。そういう情報を欲しているんだろうなと感じます。ただ、どこまでの層が欲しているのかというのはあります。雑誌づくりで難しいのは『見て楽しむ人と指導者など実際に使っている人と、どちらに向けて発信するのか』ということです。私たちは基本的に見ている方たちに向けて発信しています。

 でも、ITが急速に発達していく中で質の高い無料記事は増えています。そんな中、単純な情報を発信する雑誌だったらお金を出して買う必要性がありません。お金を払って雑誌を買う層ってコアなサッカー好きで、しかも勉強好きです。その方たちの求めている知識は指導者レベルの人たちが求める知識に近くなっています。『ヨーロッパの現場で何がやられているの?』とか。

 ただ単純な情報ではなく、その戦術を実現させるためのトレーニングとはどういうものなのかとか、そこまでのレベルを求めるようになってきていて、私たちはそのニーズも汲み取りつつ変化をしてきた結果、指導者の方たちにも読まれるようになったのだと理解しています。でも、行き過ぎてしまうと見る側のファンを置き去りにしてしまうので、月刊footballista54号なんかはその傾向が強いものなんだと思います。そのバランスは非常に難しいところでもありますが、買う必然性のないものは買われないのかな、と」

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