サッカーの解釈を深く掘り下げる。認知とプレーモデルの関係【6・7月特集】
2018年07月02日
未分類戦術を広く深めていくことで自分自身のサッカーが見えてくる
――私もある町クラブでまさしく体系化を行っていて、文書として残す作業をしている最中です。 そういうことをやっていて思うのは、指導者たちが子どもに対して「より具体的なアドバイスをできるようになった」こと。それが一番大きいことだと感じています。
浅野編集長「そうでしょうね」
――やはり指導する以上は一定レベルの知識が必要です。サッカーに対する自分なりの解釈ではなく、何百年と積み重ねてきたサッカーというスポーツが「どういうものかなのか?」を概念的に理解していることが必要です。前回、ヨーロッパの人たちはサッカーの構造や戦術をオープンに議論しているという話が出ましたが、 「もっと日本人も気軽にいろいろな人と議論を重ねながらサッカーというスポーツの理解を深めていく必要がある」と思います。アップデートというよりも、サッカーの解釈を広く深めていくという作業が大事なんじゃないかなと感じます。かつ、選手もそれがやれるといいのかな、と。
浅野編集長「ヨーロッパだと、そういうことを文字に起こすことができる指導者が多いんですよね。書くことって自分の考えを言語化することなので、すごく役に立ちます。私も書けば考えが整理されますから」
――パソコンで打つのと、手で書くのと違う感じがしますけどね。
浅野編集長「実際に脳を使う場所が違うようです。パソコンで文字を打つのと、 実際にマテリアルに書く時は脳の使う場所が違うということです。余裕があれば、手で書いた方がいいと思います」
――私は企画や構成を練る時は手で書いていることが多いです。
浅野編集長「私もメモ帳に書いていることが多いですね」
――サッカーは知識も大事だと思うんですが、認知は特に「何を見るのか?」というのをプレーしながら覚えることは必要不可欠です。浅野さんが言われた勉強会みたいなものをたまに取り入れると、チームとしての完成度が上がるのではないかと感じます。ジャンル違いではありますが、野球の野村克也さんがヤクルト時代にチームミーティングをしていたと聞きますが、あれも同じようなことですよね。
浅野編集長「そうですね。以前、個人戦術という特集を実施したのですが、そもそも個人戦術という言葉がない国もあります。 例えば、オランダ。そういうことを考えるのもまたサッカーの楽しみ方なのかな、と。個人戦術も1対1の駆け引きなのか、 フィジカル以外の判断要素のところで個人の司る領域で相手のマークが足を出せない方向の足にパスを出すとか。定義化されていなくて 、使う人によって変わってきます。1対1に勝つための戦術を個人戦術というのか。なら、そもそも個人戦術とチーム戦術の違いってなんなのか?」
――フットサルの指導者は、よく個人戦術を話してくれます。そうは言いながらもボール持っている人と持っていない人、いわゆるオンの動きだけでなく、オフの動きも個人戦術になるんです。
浅野編集長「それってチーム戦術ではないんですか?」
――そうなんです。一人一人の動きを切りとると、個人戦術になるんですよね。
浅野編集長「オランダは、それがチーム戦術としての考え方になるんです」
――私は個人戦術の切り取り方として個人にばかり目が向くことに傾倒するのであれば、もうチーム戦術でいいのかなと思ってしまいます。なぜならサッカーはチームスポーツだから。
浅野編集長「定義が定まっていないんだったらなくしてもいいのかなと思いますけどね」
――日本人は放っておいても技術を磨くことに対して自然に目が向くので、個人というワードが出ると戦術とリンクさせられないし、チームスポートにまでつなげられない気がします。戦術の部分は「チームが前提として、個人がどうすべきか」というのを考える方向に持って行くのも一つの手段かもしれません。
浅野編集長「決められた枠組みとしてのチーム戦術がある中で、試合の状況に応じて個人が判断してその枠組みをはみ出して考えることを指して『個人戦術』と読んでいるのかもしれません。ただモダンサッカーの最先端では基本すべての状況が対応するように体系化がされています。最近ではプランAとか、プランBとかという言い方がされますが、『もっと広く、この状況ではこういうプレー原則でプレーする』という体系的の、判断の原則になるので基本的にその枠から外れることはあまりないんですよね。
日本のチーム戦術の約束事の設定の仕方は具体的過ぎるのではないか、と。つまりはパターンなんです。パターンになると、すべて対応できるわけではないので、その枠を外れて個人が判断して対応していかなければならない局面が出てきます。パターンとしてのチーム戦術と、そこを外れて個人として判断していく個人戦術。枠組みは分からないではないですが、ただそれで良いのかっていう話はあります。
よくイタリアの指導者はパターンとプレー原則の話をします。彼らはスキームという言葉を使うんですが、イタリア人は『11対0』というチーム全体で動くトレーニングをすることがあります。 相手が動かない11対0の戦術練習ですね。日本人もやりますが、あれはヨーロッパの若い指導者たちは『意味がない』と口にします。理由は、サッカーが11対11でやるスポーツだから。11対0のトレーニングはパターン練習だと思うんです。
でも、ヨーロッパのサッカーはそうじゃなくて11対11の中でプレーエリアごとにプレー原則とか、チームとしてのプレー原則とかを設定した上で戦います。そのプレー原則は絶対的なものですが、細かく設定しているわけではありません。「このエリアでは縦に早く」とか、「このエリアでは2タッチで」とか…あくまでプレーの原則を設定しているだけなので、個々によって解釈の仕方があるんですね。そこは認知の話にもつながってくることだと思うんです」
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