「個人戦術」と「グループ戦術」を学ぶ意義。認知力向上のために指導者ができること【6・7月特集】
2018年08月02日
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【スペインのCEエウロパユースで第二監督を務める坪井健太郎氏】
チームだけでなく「個」にフォーカスすることも必要
――認知も体の機能の部分とサッカーの戦術の部分と両面からのアプローチがあると思います。日本の指導者はそれを別々にトレーニングしなければならないと思っている人もたくさんいます。
坪井氏「私は昨今、世界的にプレーモデルとか戦術とかの話に偏りすぎていると思っています。スペインでは、小さい頃に身体的な機能性を高めなければならないと見直されているところもあります。例えば、セルタの育成年代では再度テコ入れするためにドリル練習を取り入れています。
戦術的なアプローチが流行り、クラブとしてもそういう方向で進んだのですが、どこか限界が見えてしまってドリル練習のような反復練習やコーディネーショントレーニングが必要だと見直されています。それこそヨガを取り入れたりもしているようです。クラブとしてプロジェクトを立ち上げています。1日の練習の中で個人練習の時間を一定のパーセンテージは確保してトレーニングをやっています」
――ある一定レベルまでは体の機能性を高めることが不可欠だということですね。
坪井氏「セルタはスペインの中でも人口が多くない町にあるので、タレントが限られていることもあると思います。そのプロジェクトも限られた人数の中でいかに育てるかという背景があるから立ち上がったのだ、と。例えば、FCバルセロナやレアル・マドリードではそういうことをやらなくてもタレントがいるんです。スペインでも流れが変わってきていて、すごく興味深いです」
――坪井さんもエウロパのU19を指導していて、認知には体の機能的なものとサッカーの戦術的なものと両方が必要だというふうに感じられているわけですね。
坪井氏「もちろんです。『チームプレーをすることによって体の機能も高める』というピリオダイゼーション的な考え方が流行ってきましたが、私はそこに限界が来ているんじゃないかと思っています。やはり補足的に個人練習はやっていくべきなのではないか、と。あの考え方はトップレベルの選手たちがプレーしているから成立するものだと感じるんです。運動能力のない子たちに対しては、個人に目を向けて体の機能の部分をテコ入れしてチームを作っていないとチームプレーが実践できません。
コルネジャに在籍していた時は、個人のレベルが高いから狭い局面でも選手は勝手に突破していたんです。彼らは個のできることが多いから。それはフィジカル的にも、戦術の判断的にも、メンタリティ的にも高いから可能なんです。でも、エウロパで気づいたのは個のできることが欠けているので、個人にフォーカスしなければならいないということです。2対2のドリル練習をやったりして、個人でやれることをフィットネスの部分も含めて準備してあげないとなかなかチームとして機能しません。『全体を通して個人を鍛える』というのでは余計に遠くなってしまいます。
Jリーガーのプレーを分析していても、たとえ個人に対してしかアドバイスをしていなくてもそれが間接的にチームとしてのパフォーマンスは上がっていくんです。プロであっても個人にフォーカスをしてあげることによって、チームのパフォーマンスを上げることはできると思うんです」
――川崎フロンターレが近いかもしれません。
坪井氏「風間八宏さんはテクニックに特化してチームを変えていったわけですよね。それはセルタがやろうとしていることの、ある種の一つの形だと思うんです。私は、そこを個人分析として戦術的にポジショニングの部分にフォーカスしています。
ここ20年ほどヨーロッパはチームを前提としたトレーニングに偏りすぎていて 、少しずつ時代がシフトチェンジしてきているところは感じています。しかし、結局は彼らにはサッカーの教科書となるようなベースになるものがあるので、日本のように舵取りを一気に『こうだ!』と真逆に切るようなことはありません」
――そこに大きな違いはあります。ロシアでの日本代表のプレーモデルはそれに当てはまるかもしれません。ハリルホジッチさんと西野さんのサッカーはベースとなるものが違いました。やはり指導者の思考するサッカー次第で認知するものも変わってきます。坪井さんが出した本の中には、そういうプレーモデルを形成する上で必要な考え方が詰まっていました。
坪井氏「ありがとうございます。本の16ページにも記載していますが、私が定義する戦術の解釈は『ゲームの中で起こる状況を解決するための、個人・組織による知的活動』です。認知→判断→実行の『認知』をするにあたってもトレーニングする上で3対2の部分を切り取ったとしても『何が目的かによって何を見ましょう』という認知のポイントは変わってきます。
チームとしてプレーのベクトルを合わせるために原理原則が必要なので、小学生のサッカーとはいえそれなりのプレーモデルとなるようなイメージ、『こういうプレーをしていこう』というものがないと認知しようにも選手たちにはポイントが絞れません。認知と言ってもピッチ上には膨大な情報がひしめいています。
だから、私は『指導者には削る作業が必要になる』と考えています。そのためにチームのプレー基準となる原理原則的なものを指導者がプランニングしてあげないと、指導者はもちろん選手も的が絞れないと思います」
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