「個人戦術」と「グループ戦術」を学ぶ意義。認知力向上のために指導者ができること【6・7月特集】

2018年08月02日

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指導者はコンセプトを明確にして認知のポイントを絞る

――「今日はこういうテーマで練習していこう」と伝えて、それを目安にしながら子どもたちに指導する。そうして「うまくやれた、うまくやれなかった」という中で「それは何でだろう」というぐらいのレベルで十分ですか?

坪井氏「もちろんです。だから、第一回目(日本人選手の「認知-判断-実行」を高めるにはどうしたらいいか?)の何を見るのかという話の中で三つで十分だと伝えたんです。

『相手を見る』
『味方のポジションを見る』
『スペースどこにあるかを見る』

 何を見るのかという逆算的な考えで、例えば3対2のビルドアップトレーニングで話をします。

【図2】
図2
【※クリックで拡大することができます】

 ボールを保持した守備陣がサイドにあるマーカーゴールにドリブルでゴールを運ぶというゲームの切り取り方をします。ここのゴールに対してボールを運ぶという目的が入ってくると、一つは戦術的にチーム(グループ)として『サイドチェンジ』というテーマが挙げられます。

 チームで一つのコンセプトができたら、そこからそれを実践するためには個人でやるべきことが明確になるので個人に対してもコンセプトが発生します。そうやって少しずつ掘り下げて考えていきます。

 ここでは個人でいうと幅が大事で、同時に深さも重要になります(図2)。右SBから見ればCBの距離や角度によってパスの仕方も違ってきます。練習メニューを作る時に、ここでは何を見たらいいのか。そうすると、キーファクターは三つぐらいに絞られてきます。これが多ければ多いほど選手の頭がごちゃごちゃになるので指導者が最低限に削ってあげて、『ここが見るポイントだよ』と伝えてあげるのがコーチングです。

 さらに個人でいえば『ポジション』が関わってきます。サイドでプレーする選手とセンターでプレーする選手はタスクが違います。そうすると、当然キーファクターも変わってきます。だから、指導者の中でしっかりとまとめておくために、ポジションのところまではノートに書き起こしておくことは必要だと思います。

 例えば、CBには『サイドにボールにある時は逆サイドを見ておく』というコンセプトが入ってきます。こうやって見るとポジションごとにコンセプトに関連付けたタスクが具体的に浮き彫りになります。そうすると、これが成立すればサイドチェンジにつながるわけです。選手がタスクを理解していれば早くパスを回せるので、サイドチェンジによってサイドのスペースから相手陣内に侵入していくことになるので、結果的に何が起こるかというと『前進』になるわけです。これは『ボールの保持から前進』という一つのトレーニングの組み方です。

 やはり大事なのはきちんとテーマやコンセプトを整理して自分なりにプランニングしておかないと、練習が成立しないということです」

――非常にわかりやすい例えです。コンセプトがポジションのところまで整理されていないと、結果的に認知=見るものが具体的にアドバイスできないということですよね。

坪井氏「そうだと思っています。私も『サイドチェンジ』というチームとしてのコンセプトがなければ練習は成立させられません。テーマがあるから『認知=見る』ことに関しても各ポジションに応じてテーマを絞って指導することができるわけです。きちんと練習メニューを作って『何をトレーニングするのか』というものを明確に持っておくことは絶対に必要なことです」

――なるほど。だから、エウロパとコルネジャでは選手のレベル差があったのでトレーニングするものが違うと発言されたわけですね。

坪井氏「選手のレベルによってストレス性に違いがあります。サッカーもトラップしてパスするでしょう。でも、トラップができなかったらパスができないのと一緒で、認知ができなければプレーすることもできないわけです。ボールを受ける前のキーファクターをやっておかないと、次のプレーが成立させられません。私は時系列でキーファクターを分けています。

 ボールを受ける前、持っている最中、パスをした後。

 特に育成年代ではボールを受ける前の部分にもっとアプローチすべきです。なぜなら日本人はボールを持っている時は非常にレベルが高いからです。テクニックアクションに関してはほぼミスはありません。だから、ボールを受ける前の部分を伸ばしていけばとプレーのスピードがさらに上がっていくと感じていますので、事前作業のキーファクターはもっとアプローチしてコーチングしてもいいかなと思います。そうすると、必然的に『ポジショニング』という部分になっていくんですよね」

――受ける前の認知の部分ができると判断スピードも上がるし、もっとプレースピードを上げることができます。

坪井氏「どこでもらうかとか、受ける前に逆サイドが見えるとかでボールをコントロールしてからパスに持って行くまでのスピードは上がりますから。次となるところを見ながらボールを受けて、最終確認で逆サイドを見てパンと素早くパスを出す。そうすると、必然的に攻撃のインテンシティも上がります。

 もちろん、こうやって言葉で説明すると簡単ですが、実際にプランニングの作業をやってみないと具体的にはわかりません。そこまでの作業をやるからこそ選手に具体的なアドバイス、認知に関しても具体的なポイントが言葉として伝えられるんです。

 今回の取材テーマは、認知というより『プランニングをしようね』というまとめでもいいのではないかと思いました(笑)。

 サッカーは複雑性が高いスポーツがゆえに『見る』という重要度は他のスポーツより高いと思います。11対11という人数の多さで、しかも68m×105 mというピッチの大きさでプレーしているんですよ。認知力が高くなければ相手より素早く、さらにうまくはプレーできません」

――視覚情報をどう集め、どう分析するかで勝負が決まるといっても過言ではありません。

坪井氏「人間がやっていることだから見える範囲は狭いわけです。だから、みんながそれを広げようと身体的な機能にアプローチしているわけです。ドイツでやられているフットボナウトやライフキネティックもそうです。脳を研究したりしていますが、今後は脳にかかる疲労はどんどん高まると思います。となると、いかに回復していくか、ということにアプローチしなければなりませんよね」

――よりトレーニングのスケジュールとその内容が重要視されるかもしれません。日本では、まだまだ技術的なエラーに対する指摘に走りがちですが、そこを高めながらもより戦術的な観点からもアプローチが大事になります。

坪井氏「スペースを広げるとか、トレーニングのストレスを低くしてあげるなどしてチーム全体としての構図を理解することが大切です。ただし、ごまかすところで終わってはダメなので、テクニックの未熟さは別の部分で補うしかありません。理想は両方を取り入れたトレーニングをすることですが、それはあくまでも理想論ですし、現実は違います。それは私も指導者としてみなさんの気持ちがわかります。だから、指導者にはコンセプトを明確にして認知のポイントを絞るという調節を、子どもたちのためにしてあげる作業が必要だと思います」

【特集】サッカーにおける「視る」とは何か


<プロフィール>
坪井健太郎(つぼい けんたろう) CEエウロパユース第二監督

1982年、静岡県生まれ。静岡学園卒業後、指導者の道へ進む。安芸FCや清水エスパルスの普及部で指導経験を積み、2008年にスペインへ渡る。バルセロナのCEエウロパやUEコルネジャで育成年代のカテゴリーでコーチを務め、2012年には『PreSoccerTeam』を創設し、マネージャーとしてグローバルなサッカー指導者の育成を目的にバルセロナへのサッカー指導者留学プログラムを展開中。また、森亮太氏と共著で『誰にでもわかる サッカー説明書 ~スペインサッカーを日本語に具現化~』を電子書籍出版。


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