「個人ありき」ではチームは機能しない。U-12年代までに教えるべき守備戦術の指導法
2018年08月30日
サッカー練習メニュー守備戦術は日本サッカー全体の課題
一方で、「日本の小学年代はどうなっているのか?」という疑問、「日本サッカーはヨーロッパの進化についていけるのか?」という危機感を抱きました。私の経験からして、日本の小学生年代のサッカーはヨーロッパと比べると戦術的にあまりオーガナイズされているチームが少ない印象です。なぜそうなっているかというと、攻撃面で組織的にプレーしていないため、守備を組織的にハイレベルに行わなくてもミスが発生したり、ボールを奪えてしまうからです。
例えば、ボールを右サイドに一度誘導すると、攻撃チームはサイドチェンジをせずにドリブルで狭い局面を打開しようし、複数人に囲まれてもそのトライを続けますので、よほどのドリブラーでない限りそこでボールを奪えてしまいます。本来であれば、サイドで組織的プレッシングをかけられ、複数の選手に囲まれた状況では、攻撃側のチームはパスコースを作り、サイドチェンジを入れて対処しなければいけません。その駆け引きこそが戦術であり、攻撃戦術とは守備側のチームに問題を引き起すことです。
しかし、日本の育成年代のサッカー、少なくとも小学年代ではそうした戦術的な攻防がほとんどないため、守備側のチームが「スライド」を求められる場面すら1試合の中でとても少ない現状です。
また、他の現象として守備チームが前線から積極的に数的同数のプレスをかけてはめに行った場合、攻撃チームの中盤がCBの間に降りてビルドアップの局面で数的優位を作る、つまり守備チームに問題を引き起こすような戦術を意図的にすばやく実行できるチームも少ない印象です。そうした戦術の応酬があれば、「プレスをはがされる」という問題が起きている守備チームは次に「今は中盤でブロックを形成して自陣で奪おう」という戦術へと変更することになります。

15-16シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝はレアル・マドリードとアトレチコ・マドリードのスペイン対決となり、ヨーロッパリーグ(EL)でもセビージャが3年連続でファイナリストとなりました。リーガ・エスパニョーラが世界最高峰のリーグで世界中からスター選手を集めているという面はありますが、資金力では到底太刀打ちできないプレミアリーグよりも近年ヨーロッパの舞台で好成績を収めてい る理由は、スペインはジュニア年代から相手の出方に応じた守備戦術の変更やそのための戦術バリエーションを当たり前のものとして指導し、高い戦術レベルを習得した選手が育成されているからだと考えています。
2014年のブラジルワールドカップで日本代表がグループステージ敗退となって以降、日本サッカー界では「デュエル」と呼ばれる球際の戦いやフィジカルの重要性が叫ばれていますが、私の視点では日本の育成年代の課題は間違いなく「戦術」であり、特に守備戦術は育成年代のみならず日本サッカー全体の一番の課題だと考えています。
それを改善するためにもやはり、ジュニア年代の指導者がサッカーの全体のデザインを理解し、遅くとも小学3、4年生くらいからマッチアップする相手との1対1に加えて、2人から4人のグループでどのように守備をしたらいいのかを学べるよう指導していかなければいけないと思います。横の2人の関係でどう守るのか、縦の2人でどう守るのか、そして縦横両方の要素が入った3、4人でどうのようにコレクティブな守備をするのか、について一つひとつ習得させるようきめ細かい指導をしていくことが必要です。
そうすれば小学5、6年生になったとき、8人制サッカーにおいて3ラインでどのように守るかを理解し、11人制サッカーに移行する中学生になっても、複雑性の上がるサッカーや戦術に対して対応できる選手に自然と育ちます。そうしたベースをきちんと身につけた上で、ユース年代でプロの入口としてのコンペティション(公式戦)の中で競争力を高めるチーム作りに取り組み、その過程でチーム戦術を発揮していくという流れを作っていきたいところです。
同時進行で守備のレベルが上がっていけば、それに対抗して攻撃も新たな解決策を練るというムーブメントが必ず発生してきます。決して局面における勝負を力任せや個人の能力頼りにせず、集団でプレーすることで問題を解決する戦術アクションを選択するようにしなければいけません。日本人は世界の中でとても賢い人種に入ると思います。それは私が日本の外に出て、海外(スペイン)で指導者をやることで確認できた事実です。何より言われたことをきちんと責任を持ってこなせる国民性を持っています。日本にいれば当たり前のことかもしれませんが、それは大きなアドバンテージなのです。
そのメリットを十分に活かすためにも、ジュニア年代における低年齢、低学年から守備戦術を指導の中に取り入れていくことが必要です。世界のトップレベルでは、戦術を取り入れる年代が低年齢化しており、その傾向は今後も加速していくでしょう。
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