なぜ4種の選手は「多忙」なのか…。少年サッカー界が抱える”トレセン”の深刻な問題/指導者座談会2【9月特集】

2018年09月21日

コラム

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「選手たちの多忙な原因に」。トレセンの深刻な問題

高橋「活動には、トレセンも加わってきますよね?」

末本「そのことについてはタイムリーな出来事がありました。8月のオフ期間にトレセン活動がありました。2名の選手が参加したのですが、その翌日のクラブの活動前に1人の選手が『疲れているのでお休みしたい』と。私たちのようなクラブは平日にトレセン活動が入るため、それと練習と試合が続いてしまうことがあります。

 また、ジュニアでは地域の選抜のような活動もあり、これがまた選手たちが多忙な原因になっています。中学生のトレセンに関しては、平日3回ある練習日の合間に入ってしまい、休養日もなく週6で活動している週もあります。体の成長が著しい時期なので選手の負荷に対しては指導者が管理しています。そのあたりを踏まえると過多になるのは防ぎたいという思いもあります」

南里「私は3種に関わっていませんが、うちのクラブからもスタッフとして派遣されています。ジュニアユースについては学校の先生が中心にトレセンをやられているようです。でも、選手を選ぶ基準が明確になってなくて難しいとは聞いています」

高橋「トレセンには『JFAフットボールフューチャープログラム』(以下、FFP)があり、都道府県、市区のレベルでもありますよね? みなさんくらいのクラブになると多くの選手が選ばれていると思います。そうなると、選手の体調管理等が難しくなります。そこはどうされているんですか?」

末本「トレセンに対しては、いろいろと思うことが多いですね。中学校のトレセンは学校の先生が主に担当していて、地域の某クラブの立場ある指導者の方も入っていますが、基本的にはサポートする役割を担っているようなので非常にもったいない気がしています。

 また、トレセン自体の体制も、連絡などのスケジュール管理体制も非常に大変だと伝わってきます。昨今、学校の先生の多忙化がニュースになっていますが、夜中に連絡のメールなどが送られてきたりするのを見ると『大丈夫ですか?』と考えさせられます。

 連絡手段もメールなのですが、練習会場に向かっているときに連絡が届いたりして混乱ぶりが想像できます。過去と現在は時代も変わってきているわけですから、トレセンも学校から少しずつ切り離して、クラブ側に任せるなどより良い体制づくりが問われているのだと思います。

 トレセンについてはあまり声を挙げる指導者はいませんが、私自身は『そもそもトレセンは現場のそれに即しているのか?』と考えています。クラブチームが増え、良質な指導を受けることができる環境が整ってきています、過去にはトレセンでしか対戦できなかったような相手、海外遠征も今はクラブレベルでできるようになっています。

 その中で、トレセンとしての価値をつけるためには、また違う視点での変化も必要なのではないでしょうか。最近では、JFAがトレセンの現場に立つ指導者に上級ライセンス保持を義務づけたため、そこにいるスタッフからライセンス取得講習を促していますが、それが本来の指導者資格取得制度なのか、疑問に感じます」

南里「うちのジュニアについては、トレセンには最初から選手を出していません。私はチーム活動に価値があったらスカウトもみんな足を運んでくるし、トレセンは関係ないと思っています。アーセナル市川はジュニアユースもユースもあるからカンテラから選手を育てたいです。

 でも、もちろんそれ以上に評価を受けるのであれば、Jでもそれ以外のクラブでも移籍していいと思います。でも、最近は2名の選手が県トレの最終選考に召集かかりました」

末本「なるほど。出さないという手段は想像ができませんでした」

南里「いや、出さないというか、うちは市のサッカー協会の登録をしていないので対象外なんです。千葉県サッカー協会にしか登録していないので、必然的に県トレからのスタートになります。私は本当に実力があるのであればそこからでもいいと思っています。東京でクラブを持っていた時も区の協会に登録はしていませんでした。力のある選手はその上のブロックトレセンから選んでもらっていましたし、今もその考え方です。

 選ばれたら行けばいいと思いますが、あくまでもチーム活動が優先なのでトレセンについての最終決定権はチームにあると考えています。その活動による疲労でケガをしたりする場合もあるし、活動中のケガもあります。だから、私としては『トレセンの結果は気にしなくていい』というのがスタンスです。チームの練習をしていれば必ず結果は良い方に向かうし、実際に私は東京のクラブを指導している頃からトレセンに選ばれなくてもJクラブの下部組織に進む選手はいたし、基本はクラブありきの活動でなければならないと思っています。もちろん、チームによってはあまり環境に恵まれてない場合があり、埋もれているタレントもいます。だから、トレセンそのものを否定する気はありません」

高橋「保護者のトレセンに対する考え方は選抜ということもあり、とても勘違いを起こしやすい部分です。そこについてはどう思われますか?」

南里「うちは『トレセンで活動しなくてもいいように、Jクラブ等のレベルの高いチームと試合をする環境を作っているからチーム活動を優先してくれて構いませんよ』と自信をもって伝えています。もちろん機会があれば、こちらから推薦することもあります。だから、あとは現場の指導を見てもらい、それに納得できなければトレセンに行けるような他のクラブに移籍してもらって構いませんと言っています。このことは、クラブの説明会を含めて、保護者とコミュニケーションを取った上での話です」

小嶋「私は地域のトレセンスタッフにも入っています。チームのレギュラークラスの選手たちは数人トレセンでも活動していますので、自分がスタッフとしてトレセンの中にいた方がチームのスケジュール管理がやりやすいという面もあります。ただ選考方法も選考基準も明確にはありませんから『もっとこういうふうに見た方が平等に見られますよね』という話し合いはスタッフ内でしています。東京はブロックトレセン、地域トレセン、そして東京トレセンがあります。

 ブロックトレセンだと選抜大会に出場できる等のメリットはありますが、市や区の協会が独自に行っているものなので、地域トレセン以上でないとJFAとのつながりがあるわけでもなく、指導に関する情報更新もきちんと存在しているわけではありません。他のチームの選手と一緒に練習できる、大会に出場できる。そういうのはいいと思います」

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