“8人制サッカー”のフォーメーションの特徴を“11人制サッカー”に落とし込めていますか? 【10月・11月特集】
2018年11月05日
未分類監督が選手に影響を与えられるのは70%
木之下「少し話が前後するのですが、乾選手はフットボーラーですよね?」
倉本「そうですね。小野選手もそうです。でも、フットボーラーが前線の選手だと決まっているわけではありません。ディフェンスにもいます。誰かわかりますか?めちゃくちゃ少ないです」
木之下「マルセロ選手」
倉本「その通りです。もう一人います。アウベス選手です。非常にわかりやすいですよね。彼らに共通しているのはパサーでありながらフットボーラーだということです。大変に珍しいタイプです。なぜなら大体がレシーバーの選手が多いですから。でも一方で、フットボーラーばかりのチームは困ります」
木之下「そういう捉え方をすると、『どうしてブラジル代表が大舞台ポロッと負けてしまうのか』が説明できます」
倉本「なぜメッシがFCバルセロナでは活躍できて、アルゼンチン代表では活躍できないかはそういうところです。FCバルセロナは前線の3選手以外はすべてプレイヤーだからです。どうやってメッシを生かすかを考えている選手が多いということです。一方で、アルゼンチン代表はフットボーラーが多いからなかなか勝てないわけです。以前、元スペイン代表のシャビがインタビューでこう答えていました。
『メッシが世界一の選手であることは疑いようがない。バルサの選手はみんなメッシにフィニッシュをしてもらおうとプレーしている。でも、代表だとイグアインやディ・マリアなど他にもたくさんの選手がいるから』。
それぞれがすごい選手だから最後だけメッシだとならないわけです。ビラノバやペップはこう言っていました。
『監督が選手に影響を与えられるのは何%ですか?答えは70%です。つまり、ラスト30mまで。ラストの30mはタレントがやってのける仕事です。そこは連れてこないといけないけど、そこまでの70%は指導者の仕事』」
【マンチェスター・シティを率いるジョゼップ・グアルディオラ監督】
木之下「以前、ペップの本を編集したのですが、その中にも書いてありました」
倉本「タレントが最も力を発揮できる状況を作り、その状況を作り出すことをパターンとして練習するのが監督の仕事の一つです。それが一番ゴールが入りやすい状況だから」
木之下「結局、ペップが練習で行っていることは戦術のパターン練習だとマンチェスター・シティの選手が発言していました。私は、それを選手が理解している点がすごいと思っています。日本だと、そこまで理解している選手が多くはいないでしょうから」
倉本「サッカーに対する捉え方として、日本人は小さい頃からフットボーラーになれると勘違いをしています。私はそういう受け入れ方をしていません。ただ、フットボーラーがいなければ勝てないかといえば、そうではありません。それはプレイヤーの集団の代表格とも言える、イタリアはワールドカップに優勝しているわけですから。日本人は全員が『ドラクエの勇者になりたい』と言っているようなものです。賢者や僧侶や戦士や武道家などバラエティに富んだキャラクターがいるからパーティとして成り立っているし、サッカーならそうなっているから多彩なサッカーができるのではないでしょうか」
中澤「スペインの子どもは、みんなフットボーラーを目指しているんですか?」
倉本「目指していませんよ。指導者だってはっきりと選手に対して『できないことはやるな』と言っています。逆に『できることをやりなさい』『知っていることをやりなさい』と伝えています。だから、選手たちは得意なことをやろうとします。それは不得意なことをやってミスが増えると、選手としての商品価値が下がるからです」
木之下「なるほど。トレーニングを考えると明確ですね。70%の部分をいかに再現性高くトレーニングするかをテーマとして考えているわけですよね?」
倉本「70%の選手を育てながら、残り30%の才能をいかに見逃さないか、成長の邪魔をしないかということを考えています。あなたのチームのセンターフォワードは誰ですか?どういうことが得意ですか?
きっと、それによってシュートパターンが決まるはずなのに、それを考えずに『うちの攻撃パターンはサイドからのクロスです』と言っている指導者も数多くいるのではないでしょうか。でも、そのチームのフォワードを見てみると、『身長が140cmしかない』みたいな…おかしい話ですよね」
木之下「スペインで最終的な仕上げの部分のトレーニングをする時は自チームのフォワードの特徴を考慮し、逆算で練習メニューが組まれるんですか?」
倉本「まずは自分の監督としてのアイディアです。これが理想です。そこから実際にいる目の前の選手があります。そうすると、助力することが出てきます。家を建てることと同じです。建てたい理想の家があります。リビング、キッチンなどはこれで…そんな想像をし、いざ見積もりを受け取ると現実的に予算と合わないことがわかり、理想の家が建たないのがわかります。
京都だったら建物の高さが決まっていたりするでしょう。理想があって、予算の中からアクセスとかを考慮しながら譲歩していき、現実的な家のイメージが見えてくるわけです。それがゲームモデルです。理想と現実と照らし合わせて構築していきます」
木之下「そこには、相手も加わります」
倉本「相手があるから、ゲームプランが必要になります。ゲームモデルはまだ相手がいない状態です。ゲームモデルが決まったら、初めて4つのモーメントでどうするかが決まります。大きくは、2つでいいと思います。ボールを持っているか、ボールを持っていないか。そこからゾーン1だったら何をしたいか、ゾーン2だったら、ゾーン3だったら…。そうして深く掘り下げていくと、『守備から攻撃のトランジッション時には何をしてほしいか』となっていきます。
プレー原則は『攻撃→攻守→守備→守攻』の4つのモーメントで『選手に何をしてほしいのか』を監督として考えることです。そうすると、プレー原則はいくつもあっていいんです。プレー原則の作り方を私も講座で教えるのですが、例えばゾーン1でビルドアップをしたいとします。これは主原則になります。これを成功させるための要素を3つ考えてみます。例えば、何がありますか?」
高橋「センターバックが開く」
中澤「数的優位を作る」
倉本「そうです。監督が決めることなので、要素は何でもいい。では、運ぶを付け加えて3つだとします。これが原則を表現する上での準原則になります。では、3つの準原則のそれぞれを成立させるための要素を3つ上げていきます。例えば、数的優位を成立させるために必要な要素を3つ探していきます。そうすると、トレーニングはいくらでも考えられます。もちろん1回のトレーニングの中で全部はできません。
でも、自分たちが目指す理想のサッカーがあれば、最低限は何をやらなければならないかが見えてくるので、そういう原則を覚えるトレーニングは行わなければ理想のサッカーは実践できません。そうやって練習メニューを作っていくんです。それぞれの項目は運ぶなど抽象的でも構いません。それは『運ぶ』だけだと、練習メニューをこなす中で限界が出てくるからです。次に『前に運ぶ』とかにして次の準原則で成立させたらいいわけです。
このようにトレーニングをデザインしていくわけですが、これがまさに戦術的ピリオタイゼーションです。林舞輝(※ジョゼ・モウリーニョが責任者・講師を務める「HIGH PERFORMANCE FOOTBALL COACHING」の指導者養成コース日本人初の合格者)くんに数回会って教えてもらい、質問する中で、私もようやく理解できました。以前から知ってはいましたが、理解するのが難しかったです。
レイモンドさんのピリオタイゼーションもありますよね?違いがわかりますか?レイモンドさんは基本的にフィジカル視点からの考え方なのです。運動生理学上、試合の後日はリカバーやって次の日に休んだ方が回復は早い。
でも、戦術的ピリオタイゼーションの場合、試合後は脳が疲れているから翌日を休んだ方がいいという考えです。脳が疲れているから、翌日はオフで、翌々日からリカバーを始めた方がいいと言っています。もちろん、『ある一部を抜き出し、その部分を単純に説明すれば』の話ですが。でも、レイモンドさんも『フットボールブレイン』の重要性は主張していますし、結局どちらが良い悪いではなく、知識として多くを知っていて指導者が使い分けたら良いだけのことです」
<関連リンク>
・【10月・11月特集】「トレーニングをデザインする」
<プロフィール>
倉本和昌(くらもと かずよし)
高校卒業後、プロサッカーコーチになるためにバルセロナに単身留学。5年間、幅広い育成年代のカテゴリーを指導した後、スペイン北部のビルバオへ移住。アスレティック・ビルバオの育成方法を研究しながら町クラブを指導し、2009年にスペイン上級ライセンスを日本人最年少で取得。帰国後、大宮アルディージャと湘南ベルマーレのアカデミーコーチを計8年務めた。現在はスペインと日本での経験を活かし「指導者の指導者」として優秀なコーチを育成するサポートをしている。
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