伝えないと理解してくれない。それはサッカーでも同じ。サッカー選手がサッカー以外を学ぶ重要性【1月特集】

2019年02月06日

コラム

高校卒業後に渡米。そんな異色のキャリアを歩んでいるのは現在アメリカのオクラホマ大学に所属する黒崎優香選手だ。彼女は世代別の女子日本代表に選ばれ、藤枝順心高校時代には主将としてチームを全国制覇に導いている。「留学そのものが自分の考えを大きくしています」と語る若きなでしこは“女子サッカー大国”アメリカで何を学んだのだろうか? 今回は、前回(「サッカーをするためだけに大学に行って欲しくない」と両親に言われた。エリートコースを歩んだ若きなでしこの“アメリカ”という選択)に引き続き、1月特集の「女子サッカーを見つめる」から黒崎選手のインタビュー第2弾をお届けしていく。
※このインタビューは2018年12月中旬に実施されたものです

取材・文・写真●木之下潤 写真●Getty Images、中澤捺生


【前回】「サッカーをするためだけに大学に行って欲しくない」と両親に言われた。エリートコースを歩んだ若きなでしこの“アメリカ”という選択


アメリカで変わった学業に対する意識

――今回、黒崎さんに取材を申し込んだのはアメリカに渡ったこともあって、広い視野を持っているのではないかと感じたからです。ブログに書いている内容からもそれが伝わってくるところがありました。

 先日、日テレ・ベレーザの籾木結花選手に取材しました。彼女は現役の慶応大学生で総合政策学部という学部なのですが、選んだ理由を「スポーツビジネスを学びたかったので一つに絞ることもできたのですが、この学部では政治や経済などいろいろな授業がある中で、様々な分野に対して『問題-発見-解決』を掛け合わせて学べると思いました」と語っていました。

 普通ならスポーツに特化しがちなのに、広い視点で物事を捉えている選手だなと思いました。「勉強は嫌いじゃないし、中高ではサッカーとの両立するなか、どう効率よくテストでも点数を取れるかを考えていました」と言っていましたし、こういう子どもたちが増えたらいいなと。黒崎さんはどのように勉強をしていたんですか?

黒崎選手「高校時代はテスト前だけがんばる。という、多くの学生と同じような考えしかありませんでした。実際、本当にサッカーしかしていませんでした。籾木さんは慶応大に行かれている方なので、女子サッカー選手の中でもかなり勉強された方なのではないかなと思います。なぜなら慶応はスポーツ推薦がないからです。でも、多くの選手は違うように感じます。うまい選手も、大学進学はサッカー推薦が多いと思いますし、『こういうことを勉強したい』と目的を持って大学に進む選手はひと握りではないでしょうか。きっと、私も日本の大学に行くことを選んでいたら同じだったはずです。

 でも、大部分の女子選手は『女子サッカーだけではやっていけない』ことをわかっています。でも、私も中学、高校の頃はそこまで考えたことはありませんでした。全国大会に出場して優勝することを目指して、ひたすらがんばっている選手がほとんどです。

 でも、最近のスポーツ界はサッカー×『ビジネス』『マーケティング』…etcが主流になってきています。Jリーガーでも、そういう勉強会に参加することも増えてきていると聞いています。でも、アメリカではそれが当たり前なんです。私もそういった環境の中にいます。もちろんアスリートは多少優遇されることもありますが、アメリカのアスリートは勉強面にもノルマが課せられています。

 昨今、『日本版NCAAの立ち上げ』が話題になっていますが、メディアで取り上げられるのは集客などのお金に関わる話ばかりです。NCAA(全米大学体育協会)では、学生アスリートにGPAという成績評価値の足切り基準を定めています。マックスが4.0なのですが、GPA 2.0以下をとったら試合の出場資格を失うルールがあったり、アメリカでは文武両道が義務化されています。日本だと、サッカーできればOKですよね」

――学校側も大目に見てくれますし、様々な忖度文化がはびこっています。

黒崎選手「私もアメリカに渡らなかったらわかりませんでした。最初にアメリカの語学学校に行った時、日本で勉強していたことの浅はかさを知りましたから。今振り返ると、クリアすべきことの10分の1にも満たないくらいの勉強しかできていませんでした。だから、語学学校では勉強してもわからないことだらけ。朝から学校に行き、夕方に終わって宿題にとりかかったら夜遅くなっていました。英語ができなかったので、それが日常茶飯事です。でも、ケンタッキー大学に入ると、それですら勉強量は足りなかったことに気づきました。

 大学だと、シーズン中は12時までがサッカー部の活動時間です。それが終わってから学校での授業を受けます。1日の授業項目は曜日ごとに異なりますが、授業の合間に家庭教師に英語を学んだりもします。加えて、学校のルールとして、一年目は1週間のうちにスタディルームで8時間以上の勉強が義務化されています。だから、入学したての頃は帰宅も22時過ぎることが当たり前でした。

 何しろわからないことだらけでしたから(苦笑)。初めの頃は『こんなに勉強やるの?』って思いましたが、周囲を見渡すと母国語が英語であるアメリカ人が同じように勉強をやっています。ということは、英語ができない私はもっとやらなくてはいけないということです。だから、そこで初めて『勉強はできて損はしないな』という、高校の時とは違う考えを持てるようになりました。

 テストがあろうとなかろうと勉強するのが当たり前なんです。英語が身につくまでは教科書やパソコンを開いていない時間がないくらい。もちろん、2年目は効率よくやることを覚えました。そういう観点では、アメリカはシステムがしっかりしています。わからなかったらクラスの先生に質問できる時間があって、その時に『ここがわからない』と聞きに行けば教えてくれます。そこで気づいたんです。『先生ともコミュニケーションを取ることが大切なんだ』ということを。その方が、あちらは私が第一言語が英語ではないことを理解してくれるし、学ぼうという意欲を伝えることができます。

 自分がブログとして使っている『note』にも書きましたが、アメリカの大学でタイムマネジメントの重要性というのも学びました。これが日本にいてできるかといえば、私もできないと思います。日本ではスポーツをしている選手で勉強にフォーカスを置いている人は男女関係なく少ないですから。日本だと部活が終わってグラウンドにいる時間が長いですけど、アメリカの選手たちはささっと引き上げます。それは授業の出席が当然で、2・3分遅れてもアウトですから。

 だから、自分の人生設計もできる選手が多いのかなと。『プロになりたい』と思っている選手もサッカーは勉強があってのものだから、そこは日本の選手たちと考え方が違います。日本では、サッカーがあっての勉強。そこの違いは私もアメリカに行ったからわかるようになりました。

 そして、アメリカの大学アスリートはプロを目指して大学にきている人もいますが、大学院に進学する人も多いです。看護系、運動生理学系、ビジネス系など様々です。自然と目標が定まっている人はそこに向かって本当に勉強しています」

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