「この経験は財産になる」。“女子サッカー大国”アメリカでプレーすることで広がる「選手としての可能性」【1月特集】

2019年02月08日

育成/環境

現在、アメリカのオクラホマ大学に所属する黒崎優香選手。世代別の女子日本代表に選ばれ、藤枝順心高校時代には主将としてチームを全国制覇へと牽引し、高校卒業後に渡米した。“女子サッカー大国”アメリカのプレー環境はどのようなものなのか。今回は、前回(伝えないと理解してくれない。それはサッカーでも同じ。サッカー選手がサッカー以外を学ぶ重要性)に引き続き、1月特集の「女子サッカーを見つめる」から黒崎選手のインタビュー第3弾をお届けしていく。

取材・文・写真●木之下潤 写真●Getty Images、中澤捺生


【前回】伝えないと理解してくれない。それはサッカーでも同じ。サッカー選手がサッカー以外を学ぶ重要性


アメリカの大学は資金も施設もそろっている!

――アメリカの女子サッカーの環境について少し教えてください。日本ではジュニアの女子チームは数が少ないです。そのあたり、アメリカはどうなんですか?
 
黒崎選手「サッカークラブはどこにでもありますし、女子のチームもたくさんあります。練習できる芝生のグラウンドもいっぱいあります。アメリカは学校でスポーツをやるわけではありません。基本的に、スポーツはクラブチームでしています。高校までは県外に行くことなく、地元のクラブでプレーするのが基本だと聞きました。
 
 アメリカはリクルートが盛んで、1年中行っています。小さい大会でも「いい選手がいるかもしれない」とコーチたちが見に行きます。カルフォルニアの学校の監督がニューヨークに行くなんて当たり前です。『いい選手を連れてきたい』から。14、15歳で上手い選手は大学側から声がかかっていますし、なかには12歳とかでオファーをされるすごい選手もいたりします」
 
——その場合、どこでプレーするのですか?
 
黒崎選手「地元のクラブでプレーして、大学に上がるタイミングで契約したところに行きます。うまい選手をどれだけ集められるかはコーチの仕事ですから。アメリカの大学はお金を持っているし、リクルートでかかる費用も大学側が出します。ヨーロッパや日本にもリクルートに行っている学校もあると思います。
 
 日本は高校3年生の段階で進路に向き合います。でも、その時点でアメリカの大学を選ぶのは遅いんですよね。例えば、中学生の頃からアメリカを選択肢に置いておけば英語が勉強できます。英語も1年間で学ぼうとしたら死ぬ気でやらないと難しいです。ましてや高校サッカーで優勝を目指せば、余計に勉強の時間は取れません。
 
 100%スカラシップ(奨学金制度)を出せる枠はNCAA(全米大学体育協会)の中で1チーム何人と決まっているし、アメリカでは高2や高1、早ければ中学の時点で契約している選手もいますから、日本人選手が高3の段階でスカラシップを狙おうと思っても遅いんです。強豪チームは、すでにその枠は埋まっていると思います。
 
 私は、アメリカに行って損はしないと感じています。
 
 将来的に英語を身につけていれば、いろいろな部分で役に立つと思いますし、何よりこの経験というのは自分の財産になります。だから、私はジュニア年代の子たちにそういう選択肢があることを、自分たちを含めて発信していく必要があると考えています。
 
 個人的な予想ですが、ここ数年でアメリカ留学する選手たちが増えていくはずです。日本版のNCAAの立ち上げが話題になっていますし、競技を問わず、他の選手たちも最近は情報発信していて、日本にもアメリカの情報が入り始めていますから。だから、小さい頃からもっと英語に触れる機会を増やしながら勉強をしていればチャンスは広がっていきます。
 
 それにアメリカの大学リーグでプレーしていれば、その上のプロリーグのスカウトも見ています。どの試合も全米中に放送されていますし、スポーツチャンネルでの生放送があっちでは当たり前ですから。もちろん、強豪の大学の方が見られる可能性は高いです。どんな小さい大学でもドラフトにかかる可能性はありますし、チャンスはたくさんあります。
 
 でも、アメリカの大学側からすると日本人は英語ができないから、そこで引っかかりを覚えるわけです。私も1年間サッカーしていなくて、よくがまんしてもらえたなと思いますし、偶然にも心から信頼できたコーチがいたからがんばることができました。
 
 当然フィジカルを高める必要はあるし、身体能力とか骨格の違いとかと言い始めたらキリがありません。私も日本に帰国した時に、海外での活動を経験されたことのあるトレーナーさんとお話をしたりするのですが、『日本人は体の使い方を間違っている』と聞いたりします。間違った知識でトレーニングをしている選手が多いとも言っていました。でも、アメリカ人はそのあたりを自然にできてしまいます。その差というのは大きいですし、正しい知識でトレーニングをする必要があるとも感じています。
 
 そうしなければスピードとかフィジカルの差が開く一方です。確かに成長期に筋トレをやらない方がいいという話もありますが、アメリカでは高校から筋トレを取り入れています。だから、大学でも、女子選手で『こんな重りを持ち上げるの』という選手がたくさんいます。トレーニング施設は整っているし、そこにはコンディショニングコーチやストレングスコーチもいます。ここまですばらしい環境で大学生がトレーニングを行なっていたら『それはフィジカルでは勝てないよね』って昨シーズンに思いました。
 
 日本の大学には、ウェイトを教えてくれるコーチが各学校にいるわけではなく、選手が個人で行なっていると聞きます。そういう状態で海外に行けば、まず環境の違いに驚くでしょうし、その時点からのスタートになるからフィジカルの差を埋めるのは難しいのは当たり前です。私はアメリカで早いうちにそういう経験ができたのは本当に良かったと思っています。ウェイトは悪いことではなく、必要なことですし、こちらではストレングスコーチが専門的に教えてくれます。たまに細かい英語がわからない時もありますけど、プラスに働いていると感じています」

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