「技術的なエラー」だけで選手を評価してはいけない。“再交代”を有益に使うひと工夫

2019年02月18日

コラム

得意なことより学ぶべきこと

――子どもはポジション別にサッカーの原則を学んでいくわけですね。ポジションの話になったので聞いておきたいのですが、ジュニア年代でポジションを固定することに対してシュタルフさんはどうお考えですか?

「僕は15歳になるまでは固定させないほうがいいと考えています。理由は2つ。1つ目の理由は個人戦術を身につけるには、状況とセットでなければ意味がありません。
 
 そのポジションで起こった現象が『どういう状況で起こった』のかを自分自身の体で経験しないと習得できません。それが一つ。
 
 二つ目は、日本のシステム上、U-13は小学校→中学校に変わる段階で環境が大きく変化します。ピッチが広くなり、人数も増えますよね。つまり、U-13はおさらいの年なんです。専門性を出すのはそれ以降でいい。
 
 何かの本で読んだだけなので、正確な数字は覚えていないのですが、プロになった選手が今一番プレーしているポジションを育成年代でもプレーしていたかというと、80%が違うポジションでプレーしているそうです。
 
 ほとんどが育成年代での適正ポジションとマッチしていないんです。コーチが『こいつは絶対FWになる』という感覚は、統計的に80%間違っている。
 
 例えば『こいつは絶対にいいFWになる』と固定して10歳から18歳までFWでやらせました。プロになってからはFWでは通用せずCBにコンバートされました。もし、その選手が10歳から18歳までCBでプレーしていたら…?
 
 指導者は選手に今ないもの、今学ばせたいものを見極めてポジションを選ぶ。ポジションを固定して選手を育てて、大人になってからコンバートされるという現象は、悪い言い方をすれば指導者の『ミス』なんです、だから僕はその『ミス』を減らしたい。
 
 指導者が選手のクオリティを上げる近道は、学ぶべき内容を分かりやすく学べる環境においてあげること。得意なことだけではなく、学ぶべきことが多く起こるポジションに置いてあげることなのかな、と。だから僕はポジションを固定しません」

――フランスのトゥールーズに移籍した昌子源選手は高校生のときにCBにコンバートされたと聞きました。
 
「僕も育成年代でやっていたポジションとプロになったときのポジションは違いますし、他の指導者の方に聞いてみてもだいたい違うようです。では質問です。なぜそれでも指導者はポジションを固定すると思いますか?」

――例えば、点を取れるFWは勝つために欠かせません。

「そうなんです。1回キーパーで試合に出場して凄いセービングをしたから『お前はGKだ!』とゴールキーパーをやらせ続けたり、サイドではスピードを発揮できるから『お前はウインガーだ!』と、ポジションを固定される選手のほとんどが『いま』その『ポジション』で『素晴らしいパフォーマンス』を発揮できるからなんです。
 
 でもその選手はただ早熟だっただけで、足がズバ抜けて速いわけではないかもしれない。だからパフォーマンスで評価するのではなく、選手がどこまでサッカーの原則を理解してプレーできているかを見ることが大切です」


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<プロフィール>
シュタルフ悠紀リヒャルト(しゅたるふ ゆうき りひゃると)

1984年8月4日生まれ、ドイツ・ボーフム出身。14歳で地元のサッカースクールでコーチのアルバイトを始めたことをきっかけに、プレーの傍ら、主に育成年代で20年間指導。現役引退後は、自身が代表を務める会社が運営するレコスリーグの選抜チームであるレコスユナイテッドや、ドイツのSVヴェルダー・ブレーメンと育成提携している日独フットボール・アカデミーで指導。2016年には世界各国の育成専門家が集うベルギーの育成コンサルティング企業「ダブルパス」と業務提携を結び、3年がかりで日本チームのリーダーとしてJリーグ全54クラブの監査とコンサルティング業務を担当。ドイツ・サッカー協会公認A級(UEFA A級)ライセンス、日本サッカー協会公認S級ライセンスを取得。2019年にはY.S.C.C.横浜(J3)トップチーム監督に就任し、日独フットボール・アカデミーでは育成ダイレクターを務める。

 

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