忙しすぎる現代の子どもたちが食育を通じて得られる「3つの力」
2019年06月04日
メンタル/教育

【「食事作りに関わることが大切」と説く川上えり先生】
子どもが家事に関わる時間は中学校で急落
「子どもはいずれ自然と料理や家事をできるようになるはず」
そんな風に漠然と思っている親御さんは少なくないかもしれません。ところが、2015年に行われた日本生活協同組合連合会の調査によれば、子どもが家の仕事に関わる割合は、小学校1年生をピークに緩やかな下降線を描き、中学校2年で半分程度にまで落ち込みます。

小学校高学年から中学校1年生にかけては、週に1回以上自発的にお手伝いをする子の割合が5割前後で推移していますが、中学校2年生になると33.8%に急落し、59.2%の男女が「(自発的にお手伝いを)ほとんどしない」と回答しています。
考えられる原因としては、中学生になると学習量が増えること、平日の部活動で小学生のころに比べるとさらに時間の余裕がなくなること、思春期にさしかかり、それまで密だった親子のコミュニケーションが少しずつ減っていく傾向があることなどが推測できます。
このようなことを踏まえると、食事作りの大切さを体感するためには、小学生のうちから台所で行う作業に慣れ親しんでおくことに越したことはありません。それのみならず、料理は後片付けや食器洗い、買い物などさまざまな家事と地続きの関係です。料理はもちろんのこと、小学生のうちからできるだけ多くの家事に触れていたほうが、その後の成長過程において家事の習慣化にも役立つのではないでしょうか。
私は料理を通じて得られる大切な「3つの力」があると考えています。
ここまで、子どもがいずれ自立することを見据えて料理の時間を持つことの大切さについて触れてきましたが、料理をすることのもうひとつのメリットは「家族のコミュニケーションが生まれる」という点もあげられます。それだけではなく、「家族のために料理をする」ということは、誰かの気持ちを考える想像力や共感力、工夫する創造力を育むことにもつながります。
例えば、スーパーに行ったら「お父さんが好きな枝豆を買ってあげようか」「妹はハンバーグに野菜を混ぜたら食べてくれるかな」といった会話をしながら誰かの“喜ぶ顔”を想像しますよね。カレーを作るとしたら、「どのくらいの辛さなら家族みんなが食べられるか」と考え、「じゃあ、野菜はこんな風に切ってみよう」と、自分なりに料理の工程やそのやり方をイメージします。
食事を囲みながら「おいしいね」とみんなで感情を共有し、「ありがとう」という家族の喜ぶ顔を見て、奉仕の喜びを知る。
このように、いつも家族に“やってもらう”ことが当たり前だった子どもが何かを“やってあげる”ことには、大きな意味があるはずです。“奉仕の心”は巡り巡ってサッカーのプレーにも生きてくる瞬間だってあるかもしれません。
人は食べ物を家族で分け合い、共同体としてともに子育てを行うことで、心が進化し、高い共感能力が身についたと言われています。火を起こして調理をすること、食べられるものを選び分けること、道具の使い方を教えることは「誰かの役に立ちたい」「誰かを喜ばせたい」という気持ちから発生した行動であり、そうした行動が人の認知能力を高めたのではないか、という説もあるくらいです。
人が「誰かのために」という思いを糧に認知能力を進化させてきたのだとしたら、子どもが家族のために料理をすることは、彼らの心を育むことにつながるのではないでしょうか。今回は、ちょっと硬くて哲学的な話になってしまいましたが、とにかく、例えば6月16日“父の日”をキッカケに、お父さんのために親子で料理を楽しんでみてはどうでしょうか?
6月の食育連載第二弾は、実際に子どもと料理をするにあたって「学びを盛り込みながら、どうやったら楽しく作ることができるか」というポイントに焦点を当てて紹介していきたいと思います。
【参考】
※山極寿一『「サル化」する人間社会』(2014)集英社インターナショナル
※小中学生のお手伝いに関する調査―日本生活協同組合連合会
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<プロフィール>
川上えり(かわかみ・えり)
管理栄養士。海外プロサッカー選手の栄養アドバイスや、FCジュニオールの栄養アドバイザー。海外・国内遠征・合宿帯同や、アスリート向けレシピ制作、子育てママ向けのコラム執筆などで活動中。
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