日本人選手の「認知-判断-実行」を高めるにはどうしたらいいか?【6・7月特集】

2018年08月01日

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スペインでは育成年代から当たり前のように「認知」に対するトレーニングが行われている。「スペースがどこにあるか」「人がどこにいるか」、小さい頃から基本的なサッカーの原理原則の理論に基づき指導を行っている。それに対し、日本のサッカークラブやスクールは「技術練習」ばかりに目を向ける。「認知-判断-実行」の部分を磨いていくために、日本の指導者やボランティアコーチはどうしていくべきなのか?指導者として長年スペインに在住し、『サッカー 新しい攻撃の教科書』の著書である坪井健太郎氏に話を伺った。

【後編】「個人戦術」と「グループ戦術」を学ぶ意義。認知力向上のために指導者ができること

◾️第1回
状況判断の向上に「認知力」は必要不可欠である。その真意を説く

◾️第2回
「問いかける」だけではない。プレーの”選択肢”を広げるために指導者ができること

◾️第3回(前編)
なぜ今「認知」なのか。サッカーの戦術的な理解を広く深めることの意義

◾️第3回(後編)
サッカーの解釈を深く掘り下げる。認知とプレーモデルの関係

◾️第4回(前編)
認知とは「状況に応じて的確に早い判断ができること」。大豆戸FCが実践する“頭の中へアプローチ”

◾️第4回(後編)
なぜ育成年代から「頭の中」を鍛える必要があるのか? その意義を考える

■第5回
子どもがプレーを「自ら決断する」意味。パルメイラスU11監督が語る指導の本質

取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部


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スペインでは基本的なサッカーの原理原則の理論に基づいて指導する

――そもそも「認知」を身につけるのも少人数制サッカーから取り組んだほうがいいのでしょうか?

坪井健太郎氏(以下、坪井氏)「そうですね。やはり見るものが多くなるほど負荷が増えますから」

――スペインのトレーニングも、小学校低学年では2対1とか3対2とかそのぐらいの人数から始めるんですか?

坪井氏「人数が多い、ピッチが広いと情報が溢れてしまうので脳に負担がかかってしまいます。複雑性をコントロールする意味では、スペインでも小さい頃は少人数制でプレーするのが一般的です。小学生の試合は7人制サッカーですし、小学校低学年ぐらいの世代だと5人制でサッカーをする場合もあります。スペインは小学校3年生からリーグ戦がスタートするので、それまではサッカースクールに通ってサッカーを楽しみますが、そこではだいたい4〜5人制ぐらいでトレーニングマッチをしています」

――サッカースクールでは試合を回していく感じですか?

坪井氏「公式戦ではないので審判付きでやっているわけではありません。平日に2対1などの簡単な戦術のトレーニングを行って、週末に試合をバンバン回す感じです。練習ではボールポゼッションもやっていますよ。そこでプレーをする上で重要な個人戦術として『幅と深さの概念』を認識させます。日本のスクールのように技術練習に特化するというようなことはありません。小さい子であっても『スペースがどこにあるか』『人がどこにいるか』という基本的なサッカーの原理原則の理論に基づいて指導しています」

――サッカースクールでは、シーズンの最初はどういう練習をやっているんですか?

坪井氏「ボール回しとか、ポゼッションとかをやってゲームをするような流れが一般的です。プレーモデルが入ってくるようなものではなく、グローバル形式でのトレーニングの流れです」

――「ちゃんとボールを守りながらどう攻めるか」ということが主眼に置かれた内容ですか?

坪井氏「ボールをきちんとつなぐ。みなさんが想像するようなスペインっぽいことです。コーチたちのアドバイスも、『パスコース作れよ』、『広がれよ』……前に走って、スペースを見つけて、ボールを受けて、シュートコースあるよ、と、日本と同じように基本的なことしか伝えていません」

――なるほど。コーチが声をかけながらちょっとずつ教え込んでいくというような感じなんですね。その中で守備のことは言うのですか?

坪井氏「その世代だと、そこまではあまりやってないと思います」

――では、ボールを持ってプレーすることの楽しさを伝えるというような指導ですか?

坪井氏「まずは『ボールを持つ』というところからだと思います。私もサッカースクールに関わっているわけではないので深くは言えないことが多いです。ただ、『ボールに関わる』という意味で『一生懸命やろう』『サッカーに入り込め』というようなサッカーを通しての集中力、人間教育的なところの姿勢は強く求めています。『ちゃんと話聞け』『ちゃんとやれ』と。スペインでは運動をさせるためにサッカースクールに通わせている親御さんもいますから。

 サッカースクールで守備云々ということまでは言わないです。小学校低学年ぐらいの子どもにとってはストレスになってしまいます。ちゃんとしたサッカーをやりたいんだったら協会登録のチーム、つまりクラブチームに入りなさいということだと思います。

 それでも攻撃の部分では『認知-判断-実行』の認知の部分は自然に身につくような指導をしています。それがあって、上のカテゴリーにつながっていきますから。だから、カテゴリーが上がって協会登録チームに入り、トレーニングが複雑になっても『常に状況を見て、判断をして、自分が何をするのか』という行動のプロセスは身についています」

――状況に応じて個々に適切な声をかけ、サッカーというスポーツを自然に覚えさせているわけですね。

坪井氏「私たち人間は日常生活でも『状況を認知して、分析して、自分がどうしたらいいかを決める』とプロセスを無意識に踏んでいます。それは単純な行動として。逆に、なぜ日本の育成年代のサッカーでそういうことを普通に考えないのかを疑問に思います」

――少し戦術に踏み込んだことになると、なぜか急に敷居が上がるんです。

坪井氏「戦術というより行動です。つまり、行動学じゃないですか。戦術と枠に入れ込んでしまうと難しく考えてしまうから拒否反応が出てしまうのではないでしょうか。『認知-判断-実行』を当たり前のことだという枠組みにした方が指導者も取っ付きやすいと思います」

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