高校サッカー心を揺さぶる物語 「いつも親父がいてくれた」
2014年01月10日
インタビュー悲願の選手権出場
年が明け、僕は高校3年生になった。
親父はガンを専門に扱う病院に転院して、治療を続けていた。
ガンの進行は予想よりは早くなかったけど、調子がいいときと悪いときが両極端で、まったくもって楽観できる状況ではなかった。
だけどサッカー部では、僕は何が何でもしがみついていかないといけない立場の人間。少しでもサボるとすぐにBチームに落とされてしまうため、グラウンドでは親父
のことを考えていられなかった。
それくらい必死になっていた。
いつしか季節は夏になり全国高校サッカー選手権大会の予選が始まった。
この頃の僕はというと、Aチームに上がることすらできなくなっていた。監督が何を求めているのか、そういうことを考えて練習していたけれど、うまくいかない。原因がわからないまま、もがいていた。
今から思うと気合いだけが空回りしていたんだと思う。試合でもスタメンはおろかベンチにも入れない状態で、スタンドの観客席が僕の指定席になっていた。
チームは選手権の予選で快進撃を続け、決勝まで勝ち上がっていった。初の選手権出場を賭けて臨んだ決勝戦。僕は相変わらずスタンドにいた。
そして……、僕の親父もスタンドにいた。
もちろん、親父の状態は良くない。それでも車椅子に座って、親友が率いるチームを応援し、悲願達成の瞬間を心待ちに見つめていた。
チームは決勝で勝利し、選手権出場を達成した。親父は誰よりも喜んでいた。
「角谷、やったな!! おめでとう!」
親父は車椅子から立ち上がっていた。立っていられるような状態ではなかったのに、親父はスタンドから角谷監督に大きな声をかけた。角谷監督は大きくガッツポーズを見せた。
弱っている身体に鞭打ってでも、夢を叶えた親友に対し、自分の声で祝福をしたかったのだろう。親父の熱い気持ちが伝わってきた。
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