生と死を強く考えさせられた石川直宏選手の「2011」
2014年03月11日
インタビュー◆震災と新生活
起こることすべてに意味がある―――。
石川が何度か口にした言葉だ。
人生には喜びもあれば、逆に、悲しみに打ちひしがれることもある。
「その出来事すべてに〝意味〟を持たせなきゃいけないし、自分の中でも、意味を持ちたいと思っています」
2011年。
石川にとってのこの年は、そんな漠然とした思いを、ひとつひとつ思索する、特別な一年となった。
新しい命を授かった時、石川には、新たな覚悟が芽生えた。
恋人同士だった二人は結婚を決める。
入籍は、新シーズンの始まる2日前の雛祭りの日だった。
その年、J2でスタートを切ったFC東京は、1年でのJ1復帰をめざし、みな意気込んでいた。
石川はといえば、合流が少々遅れていた。
キャンプ中に違和感のあったふくらはぎのリハビリで、練習は特別メニューが組まれていたのだ。
その日も、アウェイ遠征には帯同せず、練習後はすぐに帰路についた。
午後はひとりでマンションを見学する予定にしていた。夫婦はまだ新居を決めていなかったのである。
3月11日、14時46分。
紹介された物件を見に、一人車を走らせていると、突然はげしい揺れに見舞われた。
尋常じゃない事態に、車を道路わきに止めると、再び窓の外に目をやった。
見ると、周囲の電柱が信じられない振れ方をしていた。
しばらくして、揺れがおさまったのを見計らい、不動産屋との約束の場所まで移動した。そして、車内でテレビニュースを見た。血の気が引いたという。
すぐさま妻に電話をするも、まったくつながらない。実家の両親の元にいるはずなのだが、携帯電話の回線がパンクしているらしい。不安がつのった。
「心配というのが、今までとはまったく違ったんです」
妻と、まだ小さいけれど、お腹の中には子どもがいる。
電話がつながるまでの時間が、とてつもなく長く感じられたという。
その間も、大きな揺れがいく度となく襲った。
ようやく聞こえた妻の声に、ほっと胸をなでおろした。
Jリーグは、無期限の延期になった。それどころではないほどに、震災の残した爪痕は大きかったのだ。たくさんの犠牲者が出て、日本列島は悲しみに包まれた。
その後も余震は続いていた。
石川は、母体やお腹の子どもへの影響が心配でならなかった。あらゆることを想定しては、インターネットでかたっぱしから調べたという。
「そのどれが正しいのか、何を信じていいのか、まったくわからなかったし、今でもわかりません」
リーグが再開するまでの間、家族を関西に避難させる選手もいた。その選択肢も一応考えてみた。でも、家族の側が一番だと、最終的に結論づけたのだ。
妻はしばらくの間、都内にいる両親のもとに留まることになった。
二人が新居で共に生活するようになったのは、4月に入ってからのことだ。
翌、5月12日。石川は30歳の誕生日を迎える。
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