池上コーチの一語一得・特別編 子どもを伸ばすために親ができること
2014年05月31日
コラムサッカーは自由に楽しむもの
『少年サッカーは9割親で決まる』という本が出ました。そこに、私がジェフ時代一緒に仕事をしたブラジル人コーチのジョゼから質問された話を紹介しています。
「ブラジルのクラブでは、コーチや選手たちがスラム街に行って、スラムの子どもたちとサッカーをするよ。終わってから、僕らが子どもたちに何て言うと思う?」
私はそんなこと決まっていると思いながら「みんながんばってね。がんばったら、僕らのようにプロになれるよ、って言うんでしょ?」と答えたら、ジョゼは首を横に振りました。
「今日はみんな楽しかったね。サッカーができて良かったね、またやろうね、って言うよ。それだけだよ」
ブラジル人は「サッカーは楽しい」「サッカーができて幸せ」というスポーツの本質をきちんと理解し共有しているのです。彼の国のようにサッカーを国の文化にしてしまうには、少年期に「サッカーは楽しい」「サッカーができるのは幸せ」という感覚を体に沁み込ませなくてはいけません。
そのプロセスがないために、燃え尽きたり、「親の期待通りにならずやめた」という子どもが日本には数多くいます。
そうならないためには、親御さんの価値観や考え方を変える必要があります。子どもを伸ばすには指導者や環境が重要な要素でしょう。
でも、多くの子どもがサッカーと出会う小学生時代、指導者や環境を選ぶ手伝いをするのも保護者です。
そして、指導者が少々未熟でも、親がわが子に求めすぎず、自由にのびのびとサッカーをやらせてあげれば、その子は絶対に伸びます。
逆に、どんなに良い指導者でも、親が結果にこだわったり、ストレスを与えすぎると子どもは成長しません。
子どもを伸ばすのは「子どもの話をよく聞いて、発する言葉は少ない親」35年間少年サッカーを見てきた私の印象です。
<プロフィール>
池上 正(いけがみ・ただし)
1956年大阪生まれ。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼年代や小学生を指導。02年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。同クラブ下部組織の育成コーチを務める。03年より小学校などを巡回指導する『サッカーおとどけ隊』を開始、千葉市・市原市を中心に190カ所におよぶ保育所、幼稚園、小学校、地域クラブなどで延べ40万人の子どもたちを指導した。2010年1月にジェフを退団。同年春より「NPO法人I.K.O市原アカデミー」を設立。理事長としてスクールの運営や指導、講習会、講演をこなすかたわら、大学や専門学校等で講師を務めている。2011年より京都サンガF.C.アドバイザー、12年2月より京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターに就任。08年1月に上梓した初めての著書『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(08年・小学館)は、7万部に迫るベストセラー。11年9月には指導現場で、その実践例を大公開した『サッカーで子どもの力をひきだす オトナのおきて10【DVD付き】』が発売。2014年6月刊行の『少年サッカーは9割親で決まる』などの監修もしている。
近刊情報
『少年サッカーは9割親で決まる』
ジュニサカ賢人・池上正氏が監修した最新刊『少年サッカーは9割親で決まる』 。これまでに『一語一得』に寄せられた「練習」「試合」「自宅」などでの指導者や保護者の子どもに対する悩みや、子どもを取り巻く大人に関する疑問と、池上さんの答えを再編集したもの。マンガもついているので、それを見ながら、答えを読むことでより楽しく理解度が深まる一冊!
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