人口450万人の小国・クロアチアから“天才”が輩出され続ける理由
2015年08月28日
サッカーエンタメ最前線現状のレベルより少し高めに目標設定する
ルカの成功例でウェイトを占めたのがキャラクターであり、諦めない心だったと思う。16歳の時点で「ルカ・モドリッチがディナモのトップチームに昇格する」と断言することは、当時の私ですら困難だった。線が細く、身体が小さかったことは問題ない。けれども、同世代にはサッカーの才能にあふれる選手が他にたくさんいた。それだけに、16歳の少年に「君は昇格する」「君は昇格しない」と述べるには勇気がいったんだ。
ユース選手にとって肝心なのは次のステージだ。つまり、シニアサッカー(※文中の「シニアサッカー」は日本での一般的な解釈とは異なり、「成人によるサッカー」の意)に適応できるかどうか。そこで求められるものは幾多に渡る。
社会的知性、情動的知性、心理面など「人間としての器」を形成するあらゆる側面だ。だから、どんな若い選手であれ、シニアサッカーに適応するまで1年半から3年半の時間を要する。メッシだって2年間はバルセロナBでプレーしてトップチームに引き上げられた。要求度の高いシニアサッカーに誰もが適応できるとは限らないんだ。
適応できる者もいれば、失敗する者もいる。ルカは持ち前のキャラクターでシニアサッカーに適応した。ルカと同世代の誰もが、全く同じとは言わないまでも似通った特徴を持っていた。だが、アタマと心をシニアサッカーの世界に上手く馴染ませ、極限までその世界を受け入れたのがルカだった。
シニアサッカーとユースサッカーは二つの異なる「惑星」だ。シニアサッカーへの適応過程で我われは多くの選手を失ってしまう。これはクロアチアに限った話じゃないのでは?
もし有望な少年を育成するならば、原則は現状のレベルよりもハードルのバーを若干高めに設定し続けることだ。低すぎることもなく、高すぎることもなく。そのような環境を作ることで少年達をシニアサッカーに適応させていくのさ。我われの成功例はルカだけじゃない。現在のルカはクロアチア最高の選手だが、ディナモは誰に対してもそのような育成をしてきた。(続きは『欧州フットボール批評special issue03』でお楽しみください)。
<関連リンク>
・ただうまいだけじゃない。ルカ・モドリッチのチームにスイッチを入れるプレー
プロフィール
ロメオ・ヨザク
1972年10月11日生まれ。ザグレブ出身。クロアチア・サッカー協会テクニカルディレクター。UEFAプロライセンスとザグレブ大学体育学部博士号を所有。現役時代は無名のウインガーだったが、20代から指導者として頭角を現し、今では国内外に名を轟かす育成のエキスパート。ディナモではモドリッチやクラニチャール、エドゥアルドらを育て上げ、08年にディナモ・ザグレブのユースアカデミー校長に就任。10年からはサッカー協会の強化部長を兼任した。13年にディナモを離れ、女子も含むクロアチア代
表全カテゴリーを統括する現職に専任している。英語、ドイツ語、スペイン語を操り、UEFAテクニカルインストラクターとして国外でセミナー活動することも多い彼は、一昨年にアーセナルからユースアカデミー校長職のオファーを受けるも固辞。今年からはUEFA の育成・技術支援委員会のメンバーも務めている。
長束 恭行
(ながつか やすゆき)
1973年、名古屋生まれ。同志社大学卒業。銀行員だった97年、現地観戦したディナモ・ザグレブの試合に感銘を受け退職。クロアチア訪問を繰り返し、2001年に首都ザグレブに移住すると10年間に渡って旧ユーゴ諸国のサッカーを迫った。訳書に「日本人よ!」(著者:イビチャ・オシム、新潮社)、共著に「ハリルホジッチ思考」(東邦出版)がある。
⇒MSNこと南米トリデンテの力を最大限に発揮させる戦いで3冠を達成したバルセロナは、ペップ・グアルディオラ元監督の時代を凌駕する黄金時代を築き上げるのだろうか。はたまたドイツ南部のクラブを率いるカタルーニャ人監督が、ヨーロッパのフットボール史に再び名を刻むのか。圧倒的な強さでプレミアリーグを独走したチェルシーは、ヨーロッパの舞台でもその強さを発揮するのか。主力が一気に抜けた感のあるユヴェントスは、昨シーズンの再現ができるのか。ヨーロッパ・フットボールの最前線を、“5大リーグ20クラブ”の動向から垣間見ていく。
欧州フットボール批評special issue03
【発行】株式会社カンゼン
B5判/128ページ
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