なぜ育成年代から「頭の中」を鍛える必要があるのか? その意義を考える【6・7月特集】
2018年07月17日
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【久保建英選手は2011年~2015年までFCバルセロナの下部組織に在籍していた。】
サッカーをピッチ全体で議論できるようになっら育成も変わる
――日本の育成では、どちらが正しいかになりがちです。
末本氏「どちらも必要で、そのバランスが問われているのではないでしょうか。ドリブル主義のチームもそれ自体を否定しているわけではなく、サッカーはパスも必要だから子どもにはそこも教えないといけませんよね、というだけのことです」
――育成年代の勝負論も同じです。言葉の綾として「育成が大事だから勝負は二の次だ」という言い方をすると「なら、負けてもいいんですか?」と突っ込む人が大勢います。「負けることがいい」とは言っていないですし、論点がずれているから議論に水を差される形になります。
末本氏「それと同じようにフィジカルの話題もそうですよね。接触プレーを避ける技術を身につけなさい。そういう指導者もいますが、サッカーにフィジカルは必要だし、接触プレーは避けられるものではありません。
私たち育成指導者は、世界のトップで起こっていることに目を向けなくてはなりません。身体的な部分や技術的な部分は限界が来ています。では、『何が高められるか?』というと頭の中だし、プレースピードです。
月刊footballistaの浅野賀一編集長のインタビュー(サッカーの解釈を深く掘り下げる。認知とプレーモデルの関係)でも書かれてありましたが、チャビは考えてプレーしない、これまでの蓄積から導かれて直感的にプレーしている、と」
――プレースピードを身体的なものだけで捉えているから足下の技術に走ってしまいます。
末本氏「なぜか二極化で話が進みますが、頭を使うことが得意な選手もいれば、体を使う選手が得意な選手もいるわけです。私たち育成指導者は両方をしっかり教えて選手の可能性を狭めてはいけないのです。両方にアプローチしておけば多くのタレントが育つ可能性が高いわけですから。結果的に、どちらの比重が多くプレーするのは子どもたちが決めることです」
――頭の中を鍛えていれば、自らで状況をフィードバックすることが可能です。
末本氏「認知を含めてオフ・ザ・ボールの部分はすぐに結果に出ないかもしれません。でも、自分のプレーをした要因と理由を理解できる選手は学習能力が高いのでプレーを重ねるごとに判断力は当然上がっていきます。判断するためにはプレーモデル、判断基準が大事になります。迷ったらそこに立ち返るから。結局、それがないと自分の判断基準になってしまいます。そうすると必然的にチームとして機能しません」
――バルセロナFCの下部組織を経験した久保建英選手はそういう部分に長けています。
末本「でも、久保選手は『技術が高い』と見られていますから。メディアでもそういう取り上げ方をしています。『状況判断がいい』と報じても情報を受け取る側の立場からするとわかりにくいのは理解はできます。でも、彼がすばらしいのは『認知-判断-決断』のところ、サッカーをプレーできるところだと思います」
――メディアの人間でも久保くんのプレーをちゃんと解釈できている方は多くはないと思います。
末本「技術を切り取ってしまうというか、その方が一般的には受けが良いですからね。ツイッターなどのSNSで、元フランス代表のティエリ・アンリらがよく試合の様々なシーンを解説している海外のサッカー番組が拡散されてきますが、非常におもしろいです。
『当該選手に対して、いつこの選手をみたのか?どの場面でこの選手を認知したのか?さらにボールを持っていないこの選手がこう動いたからここにスペースが空いた。ピッチ上で写真を撮るように頭の中でイメージし、そこから取捨選択をして決断したこと』など、彼らの解説はボールを中心にピッチ全体で何が起こったか、その裏にどんな理由があったのかを論理的に説明してくれます。
日本でもこういう解説が増えてくると、日本サッカー全体が変わっていくと思います」
【1/22トークイベント】中野吉之伴氏×末本亮太氏『ドイツサッカーの育成文化をどう日本に落とし込むか』

<プロフィール>
末本 亮太(すえもと りょうた)
NPO法人大豆戸FC代表。1978年、東京都生まれ。神奈川県立横浜翠嵐高校、早稲田大学教育学部で学業と平行してサッカーに打ち込む。現在、横浜市港北区大豆戸町にあるNPO法人 大豆戸フットボールクラブの代表を務める。「ちょっと自慢できる、サッカーを通じて出会うはずのない感動、人、未来を創造し、非日常を提供すること」をミッションに掲げ、精力的に活動している。また小学生を連れての被災地訪問などNPO団体として、サッカーだけにとどまらない活動も行っており、将来を担う子どもたちの育成に力を注いでいる。
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