ルカ・モドリッチ。クロアチアが生んだ天才MFのルーツ
2018年10月12日
サッカーエンタメ最前線榴弾の中での練習
ルカにお気に入りのスポーツを楽しんでもらいたいという父親の願望は、経済的な問題よりも優先されていた。そして、この成長途中だった少年が抱えていた問題は、経済的なものだけではなかった。NKザダールの練習はアンテ・バニナにあるスポーツ複合施設で行われていたが、そこはJNAが配置されていた場所の一つだったのだ。セルビアが出て行った後にも包囲攻撃は続き、クロアチア軍は宿営やインテリジェントビルの多くをそこに配していた。
そのために、子どもたちと軍隊の兵士たちを一緒に目にすることも珍しいことではなかった。それも陸上トラックを使用して、特殊訓練を行っている兵士たちと一緒にいる光景を。そうした単なる兵站的な事情はもとより、その地区での球蹴りは、現実的な困難さも伴っていた。そこはセルビアの爆撃機の標的になっていたのである。つまりは、戦略上の標的地だったアンテ・バニナで、数百人の子供が笑顔でボールを追いかける時間を過ごしていたのだった。
生存者とも称することのできた当時の保護者たち、指導者たちは、子どもたちが日々の不安に怯えるのではなく、楽しい時間を過ごすことを求めていた。そのため爆撃がある度に、一つのゲームが行われることになった。警報が鳴って爆撃兵器が降ってくるときには、定められた避難場所へと走り、真っ先にそこにたどり着いた者が偉大なチャンピオンになれたのだ。
それは何かが一つでもうまくいかなければ殺戮が起こる状況で、深刻さを排するための手段だった。その特別なゲームが頻繁に行われる時期もあり、最悪の時期には明け方から何百発もの榴弾が降り注いだ。それに苦しんだ人々の思い出によれば、千発を超えるときすらあったという。
(中略)
子どもたちにとって鉄くずの雨から逃げることがゲームであったように、町はこの悲劇をまるで普通の出来事のように受け止めている。初めには恐怖があったが、路上にいる機械歩兵、大砲の着弾、そしてありとあらゆる制限が、ほぼ当たり前のものとなっていった。
人々はそれでも働いていたし、子どもたちは学校に通って午後には練習に取り組んでいた。スポーツも含めた社会的な催し物だって行われていた。爆撃があった次の朝には、路上は公務員の手で、まるで何も起こらなかったかのように清掃されていた。地元記者のブランコ・タバックは、悲劇の舞台となった当時のザダールについて、次のように描写する。
「私たちは日々にわたる砲火、度重なる爆撃に苦しんだ。水も電気もなかった。セルビア人たちは、どこを目標とするかについてさほど気にしていなかったし、病院の小児科設備、学校、教会、バスの停留所、個人の住まいと、あらゆる場所が爆撃された。しかし、私たちはそうしたことともに生きていかなければならなかった。だから学校、保育園、店は開いていたんだ。閉める理由などなかったんだよ。なぜなら、誰もがいついかなるときにも死ぬ可能性があることを受け止めていたからだ。路上、教室、自分たちの家と、どこも危険にさらされていたのだから」
実際はそうではないのに、普通に振る舞おうとする努力があった。その努力は1993年初頭にクロアチア軍がマスレニツァ橋を取り戻すまで続き、それからザダールの状況は確実に良くなっていった。とはいえ、クロアチアの他地域では、まだまだ激しい戦闘が続くことになる。1995年8月の〝嵐作戦〞で、クロアチア軍が国のほぼすべてを統制するまでは。
町がかつてあった日々を徐々に取り戻していく中で、モドリッチ一家は自分たちの息子にとって最も重大な決断を下すことを迫られていた。彼らはホテル・コロヴァーレを去り、ホテル・イジュへと移ったのだった。
そこはさらに小さな宿泊施設で、現在は廃墟となっていて不法居住者やホームレスに占拠されている。イジュはコロヴァーレとは違い、沿岸から離れているために海目当ての旅行者が宿泊するホテルではなかった。が、ルカが初頭教育を受けていた学校から近く、何よりもNKザダールの練習場が歩いて数分のところにあった。それほど快適な施設ではなく、部屋も小さかったものの、家族の長男は節度ある幸せな生活を享受し続けている。
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