ドリブラーに欠かせない要素とは? 状況判断、タイミング、そして闘争心

2018年12月12日

コラム

2005年に創設されたファナティコスは群馬県の強豪クラブとして広く知られている。全日本U-12サッカー選手権大会では第32回大会から9年連続で「群馬県代表」の座を掴み続け、今大会は2年ぶり10回目の出場を決めている。優秀なドリブラーを育てあげ、数多くの選手をJクラブや強豪校に輩出しているファナティコスはどんな育成哲学を持ち、どんな指導を行っているのだろうか?ファナティコスを群馬の雄と呼ばれる存在に成長させた若林秀行監督の言葉に耳を向ける。

『ジュニアサッカーを応援しよう! VOL.47』より転載

取材・文●鈴木康浩 写真●佐藤博之


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闘争心あるドリブラーを育てる

 群馬県のファナティコスは「第42回全日本U-12サッカー選手権大会」で10回目の全国大会出場を決めた強豪だが、その秀でた特長は優秀なドリブラーを多数輩出していることにある。

「僕は子どもたちにプロで通用する選手になってほしいので、ここで勝負で使えるドリブルを身につけてほしいんです」

 サッカーにおけるドリブルをどう捉えていますか? この問いにファナティコスの若林秀行監督はそう答えた。

「勝負で使えるドリブルをするためには、武器を使う場所が大事になる。スピードに乗ったドリブルからゴールを陥れる。ゴールから逆算して、それが可能となる最短距離の場所を見つけることができるか。場所を見つけるためには視野を上げておかないといけないし、場所を見つけて、そこに良いトラップを加えることで、ゴールへ直結するドリブルが初めてスタートできるんです」
 
 ドリブルという武器を使う場所はどうすれば見つけることができるのだろうか。

「試合中の流れを読むということです。スコア、そして時間帯という試合の流れを読みながらプレーできる選手を僕は育てたい。つまり、サッカー観がある選手です。たとえば、最初はパスでゆっくりしながら、急にギアを入れられるような選手。今の時間帯はドリブルで勝負にいくべき、次のプレーはドリブルで仕掛けるために良いトラップをしよう、そういう考えを試合中に巡らせられる選手です。どんなときでもやたらとドリブルを仕掛けているようでは相手に的を絞られやすいし、潰されます。ドリブラーも状況を見ながら判断できないといけません」
 
 ドリブラーのポジションはサイドはもちろん、トップ下でもゴールへ向かっていくドリブルは武器となり得る。

「トップ下であれば、前が空いたときに味方とのワンツーでスピードを上げてゴールを向かって行くイメージです。ドリブルのスピードが上がることが大事なんです。1対1で相手を抜きにかかるドリブルも大事ですが、空間に向かってワンツーなどで入っていくドリブルも大事。ちょっと昔の話ですが、前園真聖さん(元日本代表、現解説者)が五輪予選のサウジアラビア戦で決めたゴールシーンがまさにそういうイメージです。メッシだってゴール前ではワンツーを駆使し、スピードアップして空間に入っていき、2タッチくらいでシュートまで持っていくシーンがあります」
 
 ポイントは、空間に入っていくときのスピードであり、タイミングだ。

「入っていこうとする空間に早く入ってしまうとそこで空間が詰まってしまう。そうではなく、自分でその空間を使うためのポジション取りをその前にしておくのです。使いたい空間とは別にポジションを取りながら、今だ!というタイミングでその空間に入っていく。まさにメッシがそのお手本です。行くときは行く。行かないときは他の場所で遊んでいる。でも遊びながらその空間を自分で作っているんです」    

 このとき若林監督が強調するのは、空間に入っていくスピードであり、そして、闘争心だ。

「大事なのはメンタルの強さ、闘争心があることです。相手に向かっていくドリブルができる選手の例を挙げれば、テベス、アグエロ、メッシ……。みんなアルゼンチンの選手ですね。アルゼンチンの選手たちはみんなドリブルで相手に向かって行き、ボールを奪われた瞬間の攻守の切り替えも本当に速い。奪われたらすぐに奪い返す。監督からすれば起用したくなる最高の選手でしょう。守備までしっかりできるドリブラーであり、かつ、相手が嫌がるエリアに入っていけて、あわよくばペナルティキックを獲得できる選手です」

 昨今、現代っ子は大人しいと言われて久しい。子どもの闘争心はどうやって鍛えればいいのだろうか。

「どんどん勝負をさせることです。そしてドリブルでボールを奪われても決して指導者が怒らないことです。一人抜いた、二人抜いた、三人抜いた、それで涼しい顔をしているようならば『じゃあ相手のGKも抜いてゴールを決めてきたら?』とチャレンジをどんどんさせるんです」
 
 グラウンド状態も闘争心を引き出すという。ファナティコスが普段使用するホームグラウンドは小石も混ざる土のグラウンドだ。取材した日は雨が降り出してきて、でこぼこでイレギュラーしやすそうな土のグラウンドの状態がさらに悪化しそうだった。

「雨が降れば子どもたちが転びながらでもやらないといけないので、自然と気持ちが前へ前へと出てくるんです。ドリブラーを育てるならば、こういうグラウンドがもっとも適していると思います。天然芝でも雨が降ると足元をとられて滑りやすくなるのでいいと思います。幼少期のドリブルを身につけるには条件が少し悪いくらいの環境のほうが良いし、ドリブラーはグラウンドにちょっとした障害物があるくらいのほうが間違いなくうまくなります」

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