「勝ちたい」と思っているのは誰か? 勝利以外の評価基準を指導者が持つ必要性【3月特集】
2019年03月29日
コラム3月の特集テーマ「問いかけ力は考える力を培う」では、しつもんメンタルトレーニング代表の藤代圭一氏に話を聞いている。第3回では、から自分自身を振り返る機会を作るための問いかけ方などについて話を聞いた。最終回となる今回は、FCバルセロナの育成年代と同じ手法を実践する藤代氏へのインタビューから、指導者が発する言葉の重要性についての理解を深めていきたい。
【3月特集】「問いかけ力」は「考える力」を培う
文●木之下潤 写真●佐藤博之

FCバルセロナも行う質問
——指導者自身の心の問いかけもオープン・クエスチョンかクローズド・クエスチョンかで、ポジティブにもネガティブにもなるように思います。確かに会議でも「それは●●だからダメかもね」「難しいかもね」という答えばかりが並ぶと、どんどんやる気がなくなっていきます。
私は町クラブのコンサルティングをしていて、僭越ながら指導者育成もしています。月1回、全体ミーティングをしているのですが、最初の頃は指導者たちがサッカーに関する知識が足らず、それがないと具体的な議論にならないので私が講義するスタイルが続きました。やはりインプットの量がどうしても多くなります。半年くらい経って、ある日、「今日は、私が仕切ります」と代表が言ってきたので、もちろんお任せしました。練習の話になり、これまでの感想として代表が「正直、トレーニングのことも難しいことを言われてもわからないから、もっと子どもたちのレベルに置き換えてもらえると助かります」と初めて本心を述べました。なので、私も「どんな練習をしたんですか?」とアウトプットする方向に切り替えました。すると、代表が説明した後に、それに対してベテラン指導者が自分の意見を滝のように話し始めました。そこからサポートの仕方や角度、ディフェンスのプレス時の状態など様々な要素の話が展開されました。
その時に、インプットとアウトプットもバランスとタイミングだなと感じました。つまり、指導者側主導で議論が始まった瞬間に、議論が深まっていきました。当たり前の話ですが、人は能動的に関わると意見を持っているから発言できます。でも、そのためには関わるものに対する知識も必要です。指導する立場にある大人は、両方の重要性を認識することが大事かなと思います。
藤代「昨年の8月にFCバルセロナのフットサルBの監督が来日したイベントで、私自身がファシリテーション(進行役)として入らせていただきました。いつも通り、『質問して、書いてもらって、答えてもらう』というトークショーをしました。すると、監督が『なんでそのやり方を知っているんだ。バルセロナでもこういうやり方をしているんだ』と語りかけてくれたんです。
『バルセロナはフィロソフィー(哲学)を持っているけど、監督やコーチ側から与えるだけでは自主的にやらないんだ。だから、一度、バルセロナらしい選手ってどういうものなのかを聞くんだ。そうして選手自身の考えを照らし合わせてアサインをするんだ』。
彼らのような哲学とビジョンを持ったクラブに所属する選手たちに対してさえ、質問して振り返りをする機会を作るわけです。自分たち指導者だけでやらずに選手に参加させて進めるんです。『うちのクラブはこうです』というと『いやいやいや』と拒否感が生まれることもありますが、『みなさんはどう思いますか?』と聞いて進めると自主性が自然に生まれます。もちろん、最終的な責任は指導者側にあります。最終決定や最終決断といった選手が立ち入れない領域は存在しますが、それ以外のことは自分ごととして主体性を持って話して行動していないとチームになりません。『選手に主体的になってほしい』という思いがあるのであれば、『指導者自身が自分ごとになっていない』と難しいですよね」
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