大人同士に生じた軋轢が子どもたちに影響を及ぼしては本末転倒だ【サッカー外から学ぶ】
2019年05月09日
育成/環境“はるか先を行く世界のサッカー”をお手本にしてきた日本のサッカー界では、他国に比べても多様なサッカー観が混在している。「ドリブルかパスか?」「個人技か組織か?」「ポジショナルプレーかカウンターか?」。“二者択一”がサッカーにそぐわないことはみなさんも重々承知のことと思うが、サッカー観の違いによる衝突や断絶は、今日もそこかしこで起きている。『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』、『「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する』の著書として知られるビジネスコンサルタントの細谷功さんは、こうした現象はサッカー界に限らず社会のあちこちで起きていて、「お互いに言葉を尽くしてもまったく何も変わらないもの」だと断言する。では、どうしたらいいのか? ヒントはやはり、「具体」と「抽象」の概念にあった。
【連載】「サッカーを“サッカー外”から学ぶ重要性」
文●大塚一樹 写真●Getty Images、ジュニサカ編集部
意見の対立が起きるメカニズムとは?
ジュニアサッカーの現場では、コーチ間の意見が衝突することも珍しくない。お父さんコーチがメインの少年団では、学年によってやっているサッカー、指向するサッカーがまったく違うという話もよく聞く。また、同じチームほど直接被害はないが、長く取材をしていると、それぞれの指導者間の“サッカー観をめぐる断絶”という微妙な空気を感じることもある。
サッカーを愛するもの同士の、愛するがゆえの衝突や断絶……。根っこは同じはずなので、子どもたちのためにもないにこしたことはない。
そもそも意見の対立はなぜ起きるのか? 細谷さんは、主張の正しさや納得感とは別に、お互いの話す言葉自体の「抽象度の違い」が、意見の対立を生んでいると説明する。
「どの世界でも意見の対立は起きるんですよ。多くは軸の対立なんでしょうね。『時と場合による』と言ってしまえばそれまでなんですが、議論がかみ合わないのは抽象度のレベルに違いがあるからなんです」
一見対立する二つの意見は、意見が異なるために衝突しているのではなく、お互いがそれぞれ別の話を一方的にしているだけで、そもそもかみ合ってすらいない。
それぞれの主張を具体と抽象で読み解くことで、和解は無理でも、「なぜこうした違いが生まれているのか?」というメカニズムを理解できるようになると細谷さんは言う。
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