「女子サッカーを見つめる」ことは日本の育成全体を再考するヒントにつながる【1月特集】
2019年01月21日
育成/環境1月の特集のテーマは「女子サッカーを見つめる」である。今月のテーマを組むキッカケとなったのは、女子サッカークラブ「松本ウイング」の代表・小林雅範氏が9月特集「改めて考えたい『4種年代』の問題点」の記事をFacebookにアップした際に寄せたあるコメントだった。今、女子サッカー界はどんな問題を抱えているのか? 改めて「女子サッカー」に目を向けることは、日本の育成全体を見直すヒントにもつながってくる。
取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部
【女子サッカークラブ「松本ウイング」の代表・小林雅範氏が当サイトのFacebookに寄せたコメント】
特集を組むキッカケは女子チームの代表の投稿
「こうした議論の輪にすら入ることが難しいのが、地方の4種登録をしている女子U12チームだったりします。存続できているチームがある一方、登録選手数を満たせずにチームが実質的に消滅というクラブもあります。公式戦で拮抗した試合を求めるのであれば、オーバーエイジとしてカテゴリーを下げたリーグに参加できればいいですが、2カテゴリー以上の差まで許容してくれるリーグは数少ないと思います。結局、『居場所がなくて、試合経験が少なくなって、仮にやっても拮抗したゲームはなかなか実現できなくて…』みたいな実情が地方では色濃くあります。
女子U12の4種統合以来、ずっと続く課題です。
『その4種統合によるプレー環境がある』という名目のもと、女子チームから去って行く女子選手もいます。男子チームもメンバー確保のために切実なところがあるとも言えます。実際、県内では何例も耳にしています。結果として、女子チームは消滅の方向へ道をたどることになってしまいます。
だから、私のチームでは、長年4種の登録に関係なく『掛け持ち活動』を登録元の男子4種チームに了解を得て、女子の大会などにはチームで参加しています。もちろん大会出場だけでなく、週末の一定の時間で必ず集まってトレーニングもしています。
大都市圏では、移動手段も比較的安価で可能な範囲に一定数のチーム数があるため、男子の4種リーグではなく、女子だけの4種リーグもあるようです。しかし、こちらはサッカー後進県こと『長野県』。南北に150km以上離れ、その間を山に挟まれている中で、女子のU12は消滅してしまったチームを含めても15チーム程度。大都市圏ではない他県でも、少なからず似たような状況はあるでしょう。
『女子とならサッカーしたい』としても、女子チームのリーグ戦で実現するには、その距離を埋める努力を大人たちがしなければなりません。でも、毎度高速を使って乗り合わせして移動するために、チームはどんな方法で財源を確保するのでしょう。
・ヒト(指導、運営の十分なスタッフ)
・モノ(チームとして活動できる備品の確保)
・カネ(モノを確保し、移動費や大会などの参加費)
このような脆弱な中で、地方の女子U12チームはそれでも逞しく活動して行かなければなりません」
このコメント(※一部調整)は、昨年の9月特集「4種年代の問題点」の記事をFacebookにアップした際、2018年9月14日に書き込まれたものだ。投稿者は、長野県松本市で女子のサッカークラブ「松本ウイング」を運営している小林雅範氏。後日取材をしたのだが、実は長野県サッカー協会の女子委員会・女子U12部会長として女子サッカーの育成普及に尽力している人物だった。
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