祝Jリーグ2連覇! サンフレッチェ広島キャプテン・佐藤寿人選手の少年時代 ―目の前の「壁」を乗り越えて―【後編】
2013年12月12日
インタビュー前編に引き続き佐藤寿人選手の少年時代を振り返ります。後編では、中学からのお話や子どもたちへのメッセージなどをお聞きしています。
文●寺下友徳 写真●佐藤博之
※『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.13夏号』P10-15より転載
「全部やりきったのか?」という父からの言葉
――その後、佐藤寿人選手はジェフ市原ジュニアユースへと進んでいくわけですが、そこには両親のサポートも大きかったのでは?
実は、父親が小学6年生の夏からジェフの方へ直接電話を入れて何回も「受験させてください」と頼んでくれたこともあって、小学6年生が3、4人、中学1・2年生を含めて10人くらいでのセレクションを大木誠さん(元ジェフユナイテッド市原・千葉ユース監督)がやってくれたんですよ。大木さんはサッカーだけでなく、いろいろな面で影響を受けた方で、大木さんと出会っていなかったら僕はプロになっていなかったと思います。
――実際、プロを見据えたジェフという場所に来たことで受けた衝撃はどうでしたか?
みんなうまかったですね。それと僕の代での1年生は最初20名以上いたのですが、その1年生は「最初の1年間で半分以上減らされる」ということに同意した上で入っていたんです。この制度は僕の代のあとにすぐなくなったのですが、中学1年生といえば体の大きい子もいれば、僕のように小さい(当時は142センチくらいしかなかった)子もいるし、フィジカルでやれる、やられてしまうこともあったので、僕はすごくしんどかったですね。実際、AチームとBチームに分かれたときに、阿部ちゃん(阿部勇樹選手、浦和レッズ)はいつもAチームで2年生の試合にも出ていたのに、僕はBチーム。とても悔しかったですね。
――では、そこからAチームに這い上がるために何をしようと思ったのですか?
実は入ってすぐのときに体が小さいこともあって一度親に弱音を吐いたんですよ。そこで父親に「全部やりきったのか?」ということを言われて……。それを言われた瞬間に「全部やりきっているよ」という言葉を言えなかったんですよね。
それからは練習場に一番早く行くとか、最後までボールを蹴るとか、用具の準備をするとか、練習に関係ないところからやり切ろうとしました。「それでダメだったらしょうがない」という感じで。
――そういった中で、自分でも明確に「プロへ行く」という考え方も出てきたのでは?
いや、まずは1年後にジュニアユースで20人の半分の中に入ること、次はジュニアユースからユースにあがるときに、ジュニアユース10数名のうち約半分しかない昇格枠に入ることが優先でしたね。プロになるよりもふるい落とされないこと、「ここにまず残らなきゃプロなんて」という思いばかりでした。
――ジュニアユース時代も、カズさんとかゴンさんの真似はしていたのですか?
そうですね。それと中学2年生のとき(1995年)に日本クラブユースサッカー選手権(U‐15)大会の登録メンバーにギリギリで入って、ほとんど試合に出ずに練習していたときに、当時一度引退してジェフの下部組織アドバイザーをしていたリティ(ピエール・リトバルスキー、元西ドイツ代表)さんに世界レベルのプレーを見せてもらったのが印象に残っています。
でも、世界レベルといっても「こうした方がいい」「こう考えた方がいい」と言ってくれたことはすべて基本的なこと。キックにしても「狙ったところにきっちり蹴る」、シュートにしても「相手GKの取りづらいところにきっちり蹴る」「まずはゴールを見て空いているところにシュートすることが大事だ」と言ってくれたことで、イメージを持ってその後の練習ができましたね。
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