岡崎慎司の成長物語。「どこにでもいるサッカー少年」が本気でプロを目指すまで
2018年06月28日
育成/環境「あいつが頑張るだけでみんなを元気づけてくれた」
数多くのポジションを経験させるというのも、田尻会長のポリシーのひとつだった。子どもたちの思考をより柔軟にするため、『オールフリー』や『セブンフリー』といった一風変わった戦い方を積極的に取り入れた。
「『オールフリー』はポジションもフォーメーションも一切決めないで、選手たちに自由に考えさせるということ。自己判断でベストな戦い方を模索していってくれればいいと思ってやらせていました。『セブンフリー』の方は1トップに慎司を入れ、2バックを決めて、あとは自由というやり方でした。
こちらの方はふたりのDFに大きな負担がかかるんです。そのときは慎司が物凄く走り回ってボールを追いかけてくれたので、かなり助かりましたね。あいつは今も高い位置から献身的にボールを奪いにいく守備をしますけど、中学生の頃からそういう意識はすごく高かったと思います。
守備から攻撃への意識を促すために『金魚みたいに動け』ともアドバイスしていました。金魚は水槽のガラスを叩くと、パッと離れるでしょう。そういうふうに動けば、シンプルに無駄なく攻められる。
慎司も一目散にゴールに向かっていました。毎試合で点を取っていたし『自分がゴールできればOK』といったエゴイストの部分もあったけれど、あいつが頑張るだけでみんなを元気づけてくれた。貴重な存在だったと思いますね」
田尻会長が『オールフリー』や『セブンフリー』といった珍しいやり方を取り入れたのは単なる思いつきではない。「子どもたちがロボット状態のままでは、個人能力に勝る関東や静岡に勝てない」と痛感させられる出来事に直面したからだ。
それが、20年ほど前の全国少年少女草サッカー大会(清水カップ)だった。宿舎で関東の子どもたちと一緒になり、彼らを見ていると、行儀作法はいい加減だし、片付けもしない。にもかかわらず、ピッチの上では抜群のうまさと強さを発揮する。逆に宝塚の子どもたちは礼儀正しく、挨拶もしっかりできるのに、サッカーになると自分たちで何も考えられない。
「タテに蹴れ」「前に出ろ」と指示した通りにしか動こうとしない選手の姿を目の当たりにして、田尻会長は愕然としたのだ。
「コーチはピッチには入れない。だとしたら、子どもたちに自分で考えて判断してもらうしかない。『ひとりがボールを持ったら、他のやつは協力体制を取れ』とアドバイスはしますが、大事なことは全部彼らに決めてもらうようにやり方を変えたんです。その結果、宝塚の子どもたちはボールを預けられる選手に成長していきました。慎司も今では想像できないかもしれませんが、自分からゲームを組み立てていくことを考えながらプレーしてました。自分の動きがチームの助けになればいいという献身的姿勢をもちつづけてくれているのは、ホントにいいことだと思います」
明確な意図のある、変化に富んだ田尻会長の練習を、岡崎も気に入っていた。
「いろんなパターンとかひらめきとかがあって、練習も毎日変わっていたんで、飽きずに楽しくやれましたね」
カテゴリ別新着記事
ニュース
- 「2024ナショナルトレセンU-14(後期)」参加メンバー発表!2024.11.14
- 「Jヴィレッジチャレンジ 2024 powered by シント=トロイデンVV」が開催!2024.11.14
- U-19日本代表、メキシコ遠征参加メンバー発表。湘南ベルマーレ・石井久継も選出で10番を背負う!2024.11.08
- 「U-16日本代表候補 国内トレーニングキャンプ」参加メンバー発表!2024.11.07
フットボール最新ニュース
- 近江高校の躍進を支えた7つの班。「こんなに細かく仕事がある」部員も驚くその内容2024.04.24
- 「三笘薫ガンバレ」状態。なぜサッカー日本代表は個を活かせないのか?2024.04.24
- 【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったか。遠藤を輝かせる得意の形2024.04.24
- リバプールがプレミア制覇に一歩リード?「タイトル争いは間違いなく波乱万丈」2024.04.24
- 前回王者マンC、絶対的司令塔の今季CL初出場・初ゴールで勝利。レアルも先勝2024.04.24
大会情報
- 【卒業記念サッカー大会 第17回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2024.03.10
- 【卒業記念サッカー大会第17回MUFGカップ 大阪大会】フォトギャラリー2024.03.10
- 【卒業記念サッカー大会 第17回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2024.03.09
- 【卒業記念サッカー大会第17回MUFGカップ 愛知大会】フォトギャラリー2024.03.09
お知らせ
人気記事ランキング
- 「2024ナショナルトレセンU-14(後期)」参加メンバー発表!
- 「2023ナショナルトレセンU-13(後期)」参加メンバー発表!【東日本】
- 関東選抜メンバー発表!【関東トレセン交流戦U-15】
- かつて“怪物”と呼ばれた少年。耳を傾けたい先人の言葉
- 「フットサルって足下がうまくなりますよね」。それだけじゃないメリット “重要な決断” が繰り返される価値とは【8月特集】
- 「2023ナショナルトレセンU-13 関東」参加メンバー発表!
- ビルドアップ能力を自然に高めるスモールサイドゲーム。スペインで行われるトレーニングデザインとその意図とは
- 「もも上げクランチ」でキック力を鍛える!/【サッカー専用】小学生のための体幹トレ
- 「JFA 第42回全日本U-12サッカー選手権大会」で輝いた8人の選手たち/ジュニサカMIP
- すぐに「痛い」と言い出す息子…。