子どもがプレーを「自ら決断する」意味。パルメイラスU11監督が語る指導の本質【6・7月特集】
2018年07月25日
未分類日本の町クラブの中にも「認知」の重要性に気づき、独自の指導を行うクラブが少しずつ増えつつある。前回の特集企画(認知とは「状況に応じて的確に早い判断ができること」。大豆戸FCが実践する“頭の中へアプローチ”)では、その一つとして神奈川で活動する「大豆戸FC」の代表・末本亮太氏に話を伺った。そこで今回は、6月下旬に平塚で開催された「コパ・ベルマーレ U-11 パイロットインターナショナルトーナメント」に招待チームとして参加した、パルメイラスのロドリゴ・ジョルダン監督に「認知」を含めてブラジルの育成に関する取材ができたので、その全文を紹介したい。
◾️第1回
状況判断の向上に「認知力」は必要不可欠である。その真意を説く
◾️第2回
「問いかける」だけではない。プレーの”選択肢”を広げるために指導者ができること
◾️第3回(前編)
なぜ今「認知」なのか。サッカーの戦術的な理解を広く深めることの意義
◾️第3回(後編)
サッカーの解釈を深く掘り下げる。認知とプレーモデルの関係
◾️第4回(前編)
認知とは「状況に応じて的確に早い判断ができること」。大豆戸FCが実践する“頭の中へアプローチ”
◾️第4回(後編)
なぜ育成年代から「頭の中」を鍛える必要があるのか? その意義を考える
取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、Getty Images
【パルメイラスは「COPA BELLMARE U-11」3連覇を飾った】
海外の名門は小さい頃から全員に状況を認知させることを求める
6月の「コパ・ベルマーレ」は「U-11」というカテゴリーだったからこそ「認知」の部分で日本と海外のアプローチの違いがより浮き彫りになった。
それはパルメイラス(ブラジル)とアトレティコ・マドリード(スペイン)の監督がこの年代の頃から「ボールから遠いサイドの選手たちに対して、熱心にコーチングを行っていた」からだ。このサッカーの捉え方は「認知」という観点で日本との大きな差を生んでいると感じる。
一方で、日本の監督たちは「ボールサイドに近い選手たちに対する問いかけがほとんど」だった。確かにサッカーはボールスポーツだからボールサイドがゲーム展開として中心になることに間違いはない。しかし、サッカーはチームスポーツだ。だから、ボールサイドから離れた選手たちが「いかに次の展開を読み、的確にポジショニングして次のプレーに備えるか」でチーム力は格段に差がつく。
大会中、パルメイラスとアトレティコ・マドリードの監督はクラブとしてのプレーモデルを基に、出場しているU-11の選手たちに「チームとしてどう戦うか。そのために自分がどうプレーに関わるのか」をボールから離れた選手たちにまで目を配り、全選手に対してアプローチをしていた。時に「このラインまで上がれ」「そのポジションまで絞れ」と具体的な指示をし、選手たちも「この状況では、こういうポジショニングをとるんだ」と納得してプレーしていた。
パルメイラスのロドリゴ・ジョルダン監督も、アトレティコ・マドリードのハビエル・ペニャス・ドニャ監督も、育成年代の選手たちがまだ成長過程であることを十分に熟知しており、個々に応じてコーチングとティーチングを非常にバランスよく使い分けていた。知識が足らないのであれば補い、十分に足りているのであれば考えさせる。
日本の監督たちの声に耳を傾けると、ほとんどが問いかける声ばかりだった。「何を見るの?」、「その状況では何をするの?」。いい声だとは思うが、声をかけられた選手の中には状況を理解していない子もたくさんいた。ということは、状況を整理させ、理解させた後に「自分が何をできたのか」を振り返させる必要があるし、それがわからないのであれば一つの答えを提示してあげる必要があったのではないだろうか。
そういう意味でも、パルメイラスのロドリゴ・ジョルダン監督の取材はとても勉強になった。育成指導者がいかに柔軟に子どもたちに合わせて指導しなければならないのか。どんな名門クラブも時代によって子どもたちに対するアプローチを変化させていること、そしてサッカーがチームスポーツであるという普遍性に対するアプローチは子どもが表現できるようになるまで粘り強く小さい頃から指導しなければならない、と様々な視点で質問に答えてくれたからだ。
以下、インタビューの全文を紹介する。ちなみに、この取材はトーナメント一回戦直後に行ったものなので補足しておく。
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